あしたの人事の話をしよう

セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役 兼 グロービス経営大学院HRM担当准教授の平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

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大学って教育機関じゃなくて就職先になっていたりしない?

以前、どなたかの著書で、「大卒の就職率が下がったというけれど、就職している人数はたいして変わっていない」とか書いていたなぁ、とふと思い出した。

要は大学生が増えすぎているんだ、というお話だった。

その時は別に何とも思わなかったけれど、時系列で調べてみようと思った。

それがこのグラフ(元データは文科省の学校基本調査)。

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ああ、たしかに1990年以降、増減はすれども減ってはいないや。

でも、減ってないけれど、グラフの青い部分(卒業者数)は増えているので、就職できていない人(大学院進学者を含むけれど)は増えているし問題なのかなぁ、と考えた。

んで、もうひとつのグラフを足してみた。

それがこちら。

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緑の折線グラフは、それぞれの年の高校卒業者数。

大学入学とは4年の差が出るわけだけれど、要は学生が減っているのに大学生は同じ割合くらいで存在している。

つまり、大学進学率が高くなっている、という、まあ誰でも知っている結果が出ただけなのだけれど。

 

でもこのグラフ。

良く見てみると、卒業者数(青い棒グラフ)は1996年以降増加傾向にあるけれど、激増ってほどでもない。

卒業者数が増えているのはむしろ1990年あたりからだ。

じゃあこの時期から何が起きていたのか、と言うことを考えて、次のグラフを作ってみた。

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大学数の推移と、高校卒業者の推移を比較したグラフだ。

これを見ると、1988年くらいから大学は増え続けている。

高校卒業生がピークになる1992年で見れば、2014年までの変化はこういうことだ。

 

 卒業生は180万人から100万人に減っている(約45%減少)

 

 大学の数は523校から781校に増えている(約49%増加)

 

なんだこれ?

 

マーケット(高校卒業生数)が縮小するというのに、競合(大学の数)は増えている?

 

そうなった理由として、ある人の意見では文科省からの補助金が出るからだ、とか、いうものもある。

正直そのあたりの理由はよくよく調べてみないとわからないけれど、以下のグラフを作ってみて、そっか「大学って就職先になってるんだ」と思った。

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本務教職員というのは、専任で教えていたり研究していたりする人のこと。

兼務教職員というのは、たとえば兼任教授とかの人。いわゆる民間企業に勤務しながら教えている人。

そして本務職員というのは、学生部や就職部の人のこと。

たしかに学校が増えているのだから、教員や職員は増えなきゃおかしい。

 

でも、ここまできれいに右肩あがりじゃなくてもいいんじゃないだろうか。

 

こうなってしまう背景には、「終身雇用」がもちろんあるだろう。

あるいは「評価されることのない職務」ということも影響しているかもしれない。

 

しかし、こんなに一律で就労人口が増加し続ける職種は他にはない。

かろうじて医療福祉職が平均して3.6%/年で就労人口を増やしている。

大学就労者と全産業就労者の変動率を比べたら以下のようになる。

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安定しているけれど、公務員のようにバッシングを受けることもない。

基本的には尊敬を受ける職種。

魅力的ではあるだろう。

けれども、これだけマーケットニーズに反し、かつ成果(研究成果でも就職率でもどちらでもOK)を生み出しているとはいいづらい状況では、やはり人事改革が急務だろうなぁ、と考える。

 

ということで、僕に大学の人事改革、やらせてみませんか?

まずはせめて民間企業なみの評価制度からでも。

 

 

平康慶浩(ひらやすよしひろ)

 

 

追伸:もちろん、大学の中の複雑な状況を理解した上で書いています。

大学に教職員として在籍している方々、洒落程度に思ってくださいね。