「出世本」韓国語版への序文
出世本、つまり出世する人は人事評価を気にしない (日経プレミアシリーズ)の韓国語版が上梓されたということを先日紹介した。
以前の記事(↓)
にも書いたのだけれど、韓国語版にはそのための序文を書いた。
韓国語に翻訳されて掲載されているはずなんだけれど、そういえば日本の読者の目には留まることがない。
だからせっかくなので、ここに日本語版を掲載してみようと思う。
少しでも前向きな気持ちになれるように書けていればいいのだけれど。
************韓国語版への序文************
韓国の読者へ
会社の中の出世の仕組みを解き明かしたこの本を、韓国で活躍されているビジネスパーソンに届けられることを、とても嬉しく思う。
私はこの本を日本の読者に向けて書いたが、韓国のビジネスパーソンにも必ず役に立つと確信しているからだ。
理由は3つある。
第一に、日本と韓国は、経済危機を迎えた時期が似ている。だから人事制度も必然的に似通った変化を遂げている。
かつて韓国でも、家族主義的な経営を重視し、年齢主義や年功主義を重視していたと聞いている。日本でもそうだった。しかし、日本でのバブル崩壊がきっかけになったように、韓国でもIMF危機が大きなきっかけとなって変革があった。そして人事制度も大きく変わった。
だから、多くの企業は家族主義的経営を脱し、優秀さや成果によって従業員を処遇する仕組みを徹底することになった。その流れは、どんな国であっても変わることはない。日本もそうだし、もちろん韓国でもそうだと考えている。
この本は、そんな時代にあわせて書いている本だ。
第二に、これからの国内の環境変化に共通性がある。
少子高齢化の進展だ。
2014年の夏に韓国の国会立法調査処が発表した韓国の少子高齢化の進展状況は、警鐘としてあえて極端な数値を示しているのだろう。しかし若い働き手が少なくなり、高齢者がいつまでも働かなくてはいけなくなるという状況には変わりがない。そしてその傾向は、日本も韓国も同様だ。
40代、あるいは50代という年齢において、自分のキャリアを自分で積まなくてはならない。自分でキャリアを改善しなくてはいけない。
会社はあなたを助けてくれない。自分のキャリアは自分で作らなければいけないのだ。この本にはそのための考え方と行動とを記している。
第三に、それらの前提を踏まえてさらに、出世に対する意欲が、韓国の方が強いと聞いているからだ。韓国で活躍している複数の知人から聞く限りでは、「出世しないと落ちこぼれのように扱われる」「出世競争のためには同僚にも大事な情報は伝えない」というような実情を聞いた。
そもそも出世とはなんだろう。
この本の中では、複数の出世のパターンを示している。会社の中で高いポジションにつくようになることが基本的な出世だ。次に、専門能力を持ったプロフェッショナルになることも出世と言えるだろう。また、起業したり、フリーランスとして活躍したりすることも、成功すれば出世になるだろう。
しかしそれらは出世の道のりにすぎない。
出世とは二つのものを得るということだ。
一つ目は、金銭的な安定だ。人によって求める金額は違えども、お金のことを気にせずに生活できるようになることは、出世によって得られる重要な結果だ。
二つ目は、時間的な自由だ。誰かに束縛されずに生活できる。時に昼夜を惜しんで活動するとしても、それすら自分から進んで選択できる状況が、出世の結果だ。
現代において私たちはこれらのものを得るために、大学を出てすぐに起業したり、フリーランスになるというリスクの高い選択肢をとる必要がない。まずはどこかの会社に勤務して、そこで経験を積むことができる。
この本を手に取る人の多くは、会社に勤務している人だろう。ぜひ自分の現状を見直し、自分らしい出世を手に入れるために、この本を役立ててほしい。
平康慶浩
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※ちなみに上記に記載している、韓国の少子高齢化進展についてのニュース記事はこちら。記事の最後にちゃんと「報告の目的は警鐘を鳴らすことである」と書いてある点に注意。