ビジネスにつながる人事制度の本質は報酬制度じゃない
先日、SMBCコンサルティング東京で、「人事評価・報酬制度の基礎」というセミナーで登壇をした。
このセミナーのさわりで話した内容が、受講した人たちの心にずいぶんとヒットしたようなので紹介してみたい。
僕は最初にこう質問した。
「今から会社をつくるとしたら、あなたは人事のどの仕組みをつくりますか?」
評価制度、報酬制度、等級制度、教育制度、があるとしてどの仕組みを優先するのか、という質問だ。
受講者の答の大半は「報酬制度」だった。
それに対して僕はさらに質問した。
「ということは、いくら払うかは決めるけれど、何を任せるのか、と言うことは決めないんですか?」
そこで受講者の方々の中で勘のいい人は気づいたみたいだった。
僕は続けた。
「たとえば居酒屋を開くとしましょう。知り合いに声をかけるとき『いくら払うからうちで働いてくれ』と言うとしてもその前に『キッチンで調理をしてくれないか』『ホールで接客をしてくれる人を探しているんだけれど』という話をしますよね。実はみなさんが当然と思っている『何をまかせるか』ということが先にあるわけです」
受講生の大半が納得したようにうなずいた。
「人事制度でいうと、『何をまかせるか』ということが等級制度なんです。居酒屋でいえば、店長が1人、調理長が1人、調理スタッフが交代制で3人、ホール責任者は店長が兼ねるとして、ホールスタッフが交代制で6人。そうやって必要な仕事を決めて、それぞれの仕事にいくらぐらいを払うかを決める。実際に経営をするとそういう順序でものを考えます」
「もし報酬から先に考え始めるとこうなります。『調理のできるあいつに月40万円で来てもらおう。でも40万円も払うと経営も大変だから、接客もしてもらおう。となるとあと使える金額は100万円だから、その範囲で雇える人をやとって、できそうな人にどんどん仕事をまかせよう』、と。こう考えた居酒屋がうまくいくとは思いづらいですよね」
受講生の全員が強くうなずいてくれた。
この先の詳細はセミナーで実際に聞いていただくか、僕の書いた
「7日で作る 新・人事考課 CD-ROM付 (Asuka business & language book)」
を読んでいただくとして、重要なことがある。
それは僕たちの思考が「あたりまえに知っていることを考えられない」ようにできていることだ。人事制度とかの仕組みを作るときに、そのあたりまえをしっかりと言葉にしないといけない。そのためには、あたりまえのことに疑問を持つくせをつけなければいけない。そんなことを、等級だけじゃなくて、報酬や評価についても説明していった。
結果として今回のセミナーはとても好評だった(最近開催するセミナーはどれもとても好評なのだけれど)。
だから、次回(10月頃に実施する)はより深堀した内容のセミナーをもう半日分用意して、半日×2回(両方参加すると全日)になるように調整することになった。
8月1日にはSMBCコンサルティングのホームページに掲載される予定なので、興味のある方はぜひ受講してみてほしい。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)