君は、一生年収500万円を超えない会社で働いていないか?
ここ数年、給与がなかなか増えない、と思うことはないだろうか。
もしそう思っているのなら、その感覚は正しいし、それはあなただけじゃない。日本中にその傾向が広まっている。
例えばあなたが今働いている会社について、次の十の質問に答えてみてほしい。
A) 売上が減り続けている
B) 三年以内に早期希望退職を実施した
C) 三年以内に一律での賃金カットを行った
D) 賞与が減る一方だ
E) 年次毎の平均人数よりも今年の新入社員(中途を含む)が少ない
F) サービス残業はあたりまえだ
G) 名ばかり管理職がいる
H) 顔見知りの二十代社員が去年一年で二名以上転職して会社をやめた
I) 33%以上を出資している親会社がある
J) 勤務実態のない社長の親族が二名以上役員にいる
もし、この質問に対して三つ以上「その通り!」と答えたなら、あなたの会社は危険信号だ。今年はたまたま昇給したかもしれないが、来年はわからない。
この質問に五つ以上「その通り!」と答えたあなたは、もちろん給与が増えなかっただろう。増えたとしてもおそらく月給で五〇〇〇円以下だったはずだ。
そんなあなたが今いる会社は『ブラック型企業』か『業績悪化型企業』のどちらかに分類される。
最悪の場合は両方の特徴を持つ『二重苦企業』の可能性すらある。
なぜそんなことになってしまっているのか。詳細は本の中に書いたけれど、要約すればその理由は二つだ。
第一の理由は『以前よりも企業が利益を重視している』ということ。
第二の理由は『誰しも転職できるようになった』からだ。
だから多くの企業では給与を増やすことができないし、そうしなくてもよくなっている。
じゃああなたの給与はもう増えないのだろうか。
安心してほしい。
あなたの給与を増やすことはできる。給与が増え続ける、『できる人』になることができる。
私はたとえブラック企業であっても給与を増やしてきた人たちを数多く知っているし、彼らがそんな『できる人』になるための手伝いをしてきた。
彼らの多くはプライベートも充実しているし、仕事ばかりしている仕事人間というわけでもない。もちろん学歴が高くてコミュニケーション能力もあって地頭もいい、という『優秀な人』ばかりでもない。
『優秀な人』の条件がそろっていなくても、『できる人』にはなれるのだ。
そして『優秀な人』でなくとも『できる人』なら給与を増やすことができる。
私は本の中に、あなたが今勤めている会社のタイプ別に、あなたが給与を増やすための基本的な方法を書いた。
『ブラック型企業』『業績悪化型企業』、そしてどちらにも属さない『普通の企業』について具体的に書いた。この内容だけでもあなたが実践すれば、来年のあなたの給与を増やすことができるだろう。
また、あなたが働いている会社の業種ごとに気を付けるべき点を紹介している。他には、あなたの職種ごとに気を付けるべき点も書いている。
さらに、ブラック型と業績悪化型両方の特徴を持つ『二重苦企業』からあなたが抜け出すための方法を書いた。履歴書の汚点にしかならないように思える企業から転職する方法だ。
少し堅苦しいが、給与を決める会社のルールとしての人事制度も説明している。
例えばあなたが初めて野球をするとして、ルールを聞かずに行き当たりばったりでうまく行動できる可能性は低い。
もちろん習うより慣れろ、と言う言葉もあるくらいだから、遊びならば、みんなに交じってプレイしているうちになんとなくルールはわかってくるだろう。でもそれは遊びだから許される。
失敗しても笑ってすますことができる。
しかしもしそれが本気の試合だったなら、とんでもないことになるかもしれない。
社会人としての生活も同様だ。
だから社会人であるあなたの給与を決めるルールは覚えておいた方がいい、と私は考える。かのアインシュタイン先生もこうおっしゃっていることだし。
ゲームのルールを知ることが大事だ。
そしてルールを学んだあとは、
誰よりも上手にプレイするだけだ。
アルバート・アインシュタイン
実際のところ、今就職している企業に、本当に入りたくて入った人は多くはないと思う。
就職人気ランキングに出るような会社に入社できた人ですら、インタビューしてみるとそうではなかったりする。
新卒であれば、なんとなく学生時代を過ごしてきて、なんとなく就職活動をして、最初に受かった会社になんとなく勤務することになった、という人が当たり前だ。
就職活動はあまりにも気力と体力をすり減らすから、最初の内定でほっとしてしまうのだ。そしてできればその会社で長く勤務したいと思うのだけれど、何年かが過ぎ、思ったより給与がもらえていないことに気づく。
真面目に頑張っているのに、なぜか生活が苦しい。仕事も覚えてやりがいはあるのだけれど、漠然とした不安がある、という状況になったりする。
あるいは前の会社が嫌で転職をしてみた。人材紹介会社が親身になっていろいろと助言してくれるし、それにともなって自分でも面接本を読んだり、キャリアの作り方などを研究してみた。
そうして今の会社に転職できたものの、入ってみるとやはりどこか不満がある。転職前はバラ色の生活を想像していたけれど、前の会社と大きく変わっていない。そんな状況に不満を持っている人も多いだろう。
不満はあきらめとセットになっていることが多い。
でも、あきらめているあなたに、あなたが今働いている会社がどんなところでも給与を増やす方法がある、と言うことを知ってほしかった。実際一握りの『できる人』はどんな会社でも給与を増やしている。
この本に書いていることをあなたがきっちりと実践すれば、あなたはそんな『できる人』になれるだろう。
『優秀な人』になるためには才能と努力が必要だ。
しかし、高い給与をもらえる『できる人』になるには『優秀な人』である必要はない。
会社のルールを知って、その使い方を知れば『できる人』になれるのだ。
本当のことを言うと、この本の中身はそんなにソフトなわけではない。割と真面目な内容を書いている。
それぞれの内容は、モノによってはすぐに実現するのが難しいこともある。だからなるべく理屈ではなく、具体例を書くように気を付けた。
でも、ちゃんと実践すれば、あなたは評価されて、あなたの給与は増える。
コンピューターゲームで高得点を出すために必勝本を参考にするように、会社での生活にも参考になるものがある、ということを知ってほしかったのだ。
せっかくの人生だ。今からでも遅くはない。
あなたの真面目さを向ける方向を、すこしだけ変えてみよう。
※この文章は、平康慶浩が2012年に出版した以下の本の内容を少々アレンジして再掲載しているものです。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)