あしたの人事の話をしよう

セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役 兼 グロービス経営大学院HRM担当准教授の平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

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創業オーナーが良く話す「???」は実際にあるのだろうか

僕はわりと創業オーナーに気に入られることが多い。そして比較的長めの契約をいただいたりするのだけれど、創業オーナーのみなさんの発言に驚かされることがある。

中でも、割と多くの創業オーナーに言われる、ちょっと困惑する話がある。

「人を見極めるには、デキるかどうかよりも大事な『???の度合い』がありますよ」

という話をされるときがあるからだ。

 

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それは僕が本で良く書いているような、「上位者の仕事ができること」とかじゃない。

なんというか、まあ確かに???は大事かもしれないけれど、でもそういう見方をしていいものかなぁ。いや、そもそも???って本当にあるのかなぁ、と思えることだ。

 

というのも、僕はまがりなりにも「学問」を背景にコンサルティングを行っている。研修の講師をしたり、アセッサーとして人の見極めを行うのも、不確かなものではなく、極力なんらかの証拠をもとにして実施する。

 

でも、この「???の度合い」は学問で語ることができない。

しかし、「???」について語る人は決して少なくはない。

 

それは「運気」だ。

「運気の度合い」が、その人の優秀さよりも重要だ、という話をされることがあるのだ。

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たとえば、いくら仕事ができる人でも、運気が下がっているのならしばらくするとダメになる。それよりは、多少仕事ができなくても、運気のある人を近づけた方がよい、という話をされる。

 

あるいは、優秀なんだけれどもどうしても運気がない人は、試用期間中の一カ月は自分のカバン持ちをさせる。そうして、自分の運気を分けてやって、それから正規作用するかどうか考えてみる。

 

そういう話を真顔でする創業オーナー経営者は多いのだ。

 

運気について比較的真面目に説いた学問に、「計画的偶発性」というものがある。

クランボルツの以下の本が有名なので、興味のある人はぜひ読んでみてほしい。 

その幸運は偶然ではないんです!

その幸運は偶然ではないんです!

 

 

この本で言うのは、要は「幸運は偶然手に入るけれど、偶然は知り合いの知り合いが多いほど増えるから、知り合いの知り合いを増やすといいよ」というような内容だ。グラノヴェターから始まるネットワーク論の話だ。

 

しかし創業オーナーが語る「運気」というのはそういうものとも少し違う気がする。

どちらかと言えば、麻雀マンガで語られるツキのようなものなのかもしれない。

 

何をバカな、と思うのだけれど、でもどこかそういうものがあるような気もする。

実際に「ツいている」と感じるときがあるからだけれど、これは錯覚なのか、本当にツキというものがあるのか。心理学的には、それって確証バイアスでしょ、で終わってしまう話なのかもしれないけれど。

 

まあ、そういうことを言う創業オーナーとおつきあいしていると、行動力とかやる気をもらえることはたしかだから、「運気」はあるということにしておこう。

 

 

 

平康慶浩(ひらやすよしひろ)