創業オーナーが良く話す「???」は実際にあるのだろうか
僕はわりと創業オーナーに気に入られることが多い。そして比較的長めの契約をいただいたりするのだけれど、創業オーナーのみなさんの発言に驚かされることがある。
中でも、割と多くの創業オーナーに言われる、ちょっと困惑する話がある。
「人を見極めるには、デキるかどうかよりも大事な『???の度合い』がありますよ」
という話をされるときがあるからだ。
それは僕が本で良く書いているような、「上位者の仕事ができること」とかじゃない。
なんというか、まあ確かに???は大事かもしれないけれど、でもそういう見方をしていいものかなぁ。いや、そもそも???って本当にあるのかなぁ、と思えることだ。
というのも、僕はまがりなりにも「学問」を背景にコンサルティングを行っている。研修の講師をしたり、アセッサーとして人の見極めを行うのも、不確かなものではなく、極力なんらかの証拠をもとにして実施する。
でも、この「???の度合い」は学問で語ることができない。
しかし、「???」について語る人は決して少なくはない。
それは「運気」だ。
「運気の度合い」が、その人の優秀さよりも重要だ、という話をされることがあるのだ。
たとえば、いくら仕事ができる人でも、運気が下がっているのならしばらくするとダメになる。それよりは、多少仕事ができなくても、運気のある人を近づけた方がよい、という話をされる。
あるいは、優秀なんだけれどもどうしても運気がない人は、試用期間中の一カ月は自分のカバン持ちをさせる。そうして、自分の運気を分けてやって、それから正規作用するかどうか考えてみる。
そういう話を真顔でする創業オーナー経営者は多いのだ。
運気について比較的真面目に説いた学問に、「計画的偶発性」というものがある。
クランボルツの以下の本が有名なので、興味のある人はぜひ読んでみてほしい。
- 作者: J.D.クランボルツ,A.S.レヴィン,John D. Krumboltz,Al S. Levin,花田 光世,大木 紀子,宮地 夕紀子
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2005/11/18
- メディア: 単行本
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この本で言うのは、要は「幸運は偶然手に入るけれど、偶然は知り合いの知り合いが多いほど増えるから、知り合いの知り合いを増やすといいよ」というような内容だ。グラノヴェターから始まるネットワーク論の話だ。
しかし創業オーナーが語る「運気」というのはそういうものとも少し違う気がする。
どちらかと言えば、麻雀マンガで語られるツキのようなものなのかもしれない。
何をバカな、と思うのだけれど、でもどこかそういうものがあるような気もする。
実際に「ツいている」と感じるときがあるからだけれど、これは錯覚なのか、本当にツキというものがあるのか。心理学的には、それって確証バイアスでしょ、で終わってしまう話なのかもしれないけれど。
まあ、そういうことを言う創業オーナーとおつきあいしていると、行動力とかやる気をもらえることはたしかだから、「運気」はあるということにしておこう。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)