やるべきことを足すよりもやらないことを引く方がいい
思いつくたびに部下に仕事を指示する上司がいます。
でもしばらくしてみてもなにもできていない。
説教しても後の祭りです。
多分、若いうちはいいんですよね。特に部下側が20代とか新人の場合なら。
だとすると仕事はすぐに終わることばかりなので、思いつきで指示した仕事も日をまたぐことはあまりないでしょう。
けれども経験を積むごとに、仕事はすぐに終わるものではなくなります。
今日頼んだ仕事の締め切りは半年後。その成果が見えるのはさらに半年後、なんてこともあたりまえになってきます。
それは逆に言えば、今日指示されたことをやらなかったとしても、悪い影響が出てくるのは半年+半年の1年後になったりするということでもあります。そうして気が付けば会社は傾いてしまう、なんてことにもなりかねません。
なぜそんなことになってしまうのか、ということを考えてみましょう。
それは部下の立場になってみればとても簡単なことです。
「すぐにやらなければいけない他の仕事があるから」
だから上司に指示された新しい仕事に手を付けることができないわけです。
こんな時、部下側に立ってみて「仕事について優先度と重要度で区分してみましょう」ということを言うことがあります。つまり「優先度が低くて重要度が高い」仕事がたいていおざなりにされてしまうので、そうならないように工夫しましょう、というような話です。
けれども上司側にたって考えてみれば、指示内容は異なってきます。
そもそもそんな分析を指示するわけにもいかないからです。だってあなたなら、部下から「この仕事の優先順位は高いのですが、重要度が高い別の仕事を先に進めました」と言われて納得できるでしょうか?
たいていの上司は「なにを勝手に判断してるんだ」と言いかねないでしょう。
だとすれば、そもそも上司側が先に優先度判断を示さなくてはいけません。
仕事の優先度判断が出来ていない上司は「どれもこれも大事だから、なるべく全部やってくれ」と言ってしまったりします。けれども時間には限りがあるし、一度に手がけられる仕事にも限界があります。
大事なことは「やらない仕事」を示す指示です。
できない上司は「あれもやれ、これもやれ、全部大事だ!」といって何も進めないような状態を生み出してしまいます。
考えてみれば、今指示している仕事についても、ちゃんと優先順位をつけられているでしょうか? もしかするとこんな指示を足してみてもよいのかもしれません。
「この仕事は今、しなくても良いから、まずはこちらだけをやってみて」
「この仕事の締め切りはあしたで、こちらは3日後。だから時間配分を考えてね」
そんな指示が部下のパフォーマンスを上げてくれる場合もあるのです。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)