新卒で選ぶべき会社の軸は「安定」か「変化」か
採用媒体としてWantedlyを使ってみています。
わりと弊社にはマッチする媒体のようで、5月と6月にそれぞれ1名ずつ新規に採用する可能性が出てきました。
HR領域で専門性の高い人はほぼ見つからないのですが、ポテンシャルのある人材が散見されます。
その中で、新卒就職におけるミスマッチも少し見えてきたのでそのことを書いてみます。
■ 新卒で入った会社で成功しているのに違和感がある
書類だけとか実際に面接した人とかいろいろいるのですが、最初に入る会社を間違えた、と考えている人が多いことに気づきました。
たとえば安定的なベストセラー商品を売っている会社に入社して、営業を担当している人がいました。ベストセラー商品を売り続けるための営業的な部署に配属され、そこで既存のルールに従って業務を覚えてきました。
そして仕事にも慣れ、成長もし、わりと社内で認められているわけですが、ふと「これがやりたかったことだっけ?」と違和感を持ってしまったそうです。
そうしてあらためて社内を見渡してみれば、やる気のない50代社員、社内政治と評価にしか興味のない40代社員、目の前の仕事に追われてあくせく働くだけの30代社員、そしてとにかく有名企業に入れたことに安心して言われたことだけをしっかりと進める20代社員。そんな人たちばかりが目に付くようになってしまったといいます。
「僕も今の仕事に疑問を持たずにこのまま頑張っていれば、30代になって一定の役職に就くでしょう。そして目の前のことをしっかり頑張っていけば、40代で部長昇進や役員昇進のレースに参加できると思います。で、勝てればいいけれど、ダメだったら50代では高い給与をもらいながらだらだらと過ごすだけになるかも。そう考えると、今言われたことだけをやる組織にいてはいけないんじゃないかと思ったんです」
そんな言葉を面接で聞きました。
この人に対して「え?そのままその会社で頑張るべきじゃない?」
と思う人が大半でしょう。けれども面接をしていた私はそうは思いませんでした。
もう少しだけ情報を増やしてみましょう。
■ じり貧の会社で安定的な仕事だけを覚える恐怖
実は彼が属している会社には、以下のような特徴がありました。
・主力商品とその関係商品が売り上げの60%を占めている
・主力商品は直近30年間にわたってほぼ変わっていない
・新規事業を多く手掛けてきたがどれもうまくいっていない
・売上は20年間ほぼ横ばいで、あえて言うなら微減し続けている
このような状態を「安定しているから良い」ととらえることもできます。
けれどもこのままでは「将来が不安だ」ととらえることもできるわけです。
その違いは、この会社が立ちいかなくなる確率、に左右されます
(専門用語では倒産確率と言って数学的に計算したりします)。
仮に会社が倒産してしまうと、「安定しているから良い」と考えて働いてきた人たちは行き先を失います。なぜなら別の会社には別のルールがあり、それを一から覚える必要があるからです。
もし一から仕事を覚えてもらうのなら、新卒を雇うほうが人件費が安くなります。
だから30代でも40代でも、新卒+α程度の金額での転職しかできなくなる可能性が高まるわけです。
安定している組織では変化が嫌われます。だから変化を起こそうとする人も嫌われる傾向があります。
結果として、変化を起こさないようにうまく調整する人が出世していくことになりますが、そのような人たちから行き先を失ってしまうわけです。
進化生物学が示すように、環境適応した生き物は、異なる環境では絶滅の危機に瀕することになるのです。
■新卒で選ぶべき会社の軸は「安定」か「変化」か
決して倒産することがない、と思われる安定的に大企業に入社することを目指す選択は、それはそれで間違っていないと思います。
ただ、その「決して倒産することがない」という点は、果たしてどれくらい先まで補償されるものなのかを考える必要があります。
また、就職に安定を求める人は、就職があがりだと考えてしまう傾向があるように思います。
しかし、日経スタイルの記事にも書いたように、キャリアでのあがりはどんどん減っています。
だから、就職に安定を求めてしまうその気持ち自体に対して疑問を持たなければいけないように思うのです。
就職とはあがりではなく、むしろ自分に新しい成長を与えてくれるチャンスだ、と考えさえすれば、どんなリスクにも対応できるようになるのですから。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)