ダメ出しから始めるよりも良い育て方はある
旧いタイプの教え方に、まず自分なりの方法でやらせてみる、というものがあります。
そして結果がダメだったら修正しながら教えるというやり方です。
比較的年配の方にこの方法をとられる人が多いのではないでしょうか。
この方法は、教える側にメリットがあります。
一方で、教わる側にメリットがあるかどうか、というと少し疑問が生じます。
教える側のメリットは、いちいち教える手間が省けるということです。
しかしそんなことは極めてレアです。
なぜなら、そもそ教えなくてもできる部下であることが条件だから。
だから部下側ができなかったとき、上司側は仕方ないな、といわんばかりに、作業についてのダメ出しを始めます。
そして人事部とかに「使えない新人をよこさないでくれ」と文句を言うわけです。
(私も20代で初めて部下を持った時にはそんなことをしていました。
その時のことをネタとして書かれてしまった本がこちら。
最初のくだりに、部下に説教しまくる私が登場します)
さて、このような「教え方」ですが、実はこの「ダメ出し」の過程そのものが教える側のメリットになっていることにお気づきでしょうか。
ダメ出しは、それ自体が部下に対してマウンティングになります。
それなりに能力がある部下でも、はじめてやる仕事でいきなり結果を出すことはできません。
だから上司側にダメ出しをされ、さらに具体的なさまざまな指示をされると、ああ、この人にはかなわない、という思いを持つようになります。
そういうプロセスそのものが、上司側にとって気持ちがよいのです。
だからダメ出しをすることによる、教える側の本当のメリットは、マウンティングができて気持ちいい、というものです。
そうして昔の人たちは、自分の指示に従順な部下を作ってきました。
けれどもよく考えてみれば、この育て方は行き止まりを生んでしまうことがわかります。
なぜなら、ダメ出しから始める育て方は、指示待ち人間を生んでしまいがちだからです。
それよりも、一定の仕事を任せられるような人材を育てるには、もっと良い方法があります。
それは、最初にやり方をしっかり教えること。
そして、やってみた結果に対して、前向きな助言をすることです。
たとえできていない点があるとしても「こんなんじゃだめだよ」と伝えるのではなく「ここをもっと変えたらよくなると思わない?」と質問していく方法をとるのです。
一時のマウンティングで気持ちよくなるより、きっちり育てたほうがあとあと、上司のためにもなります。
とてもあたりまえのことだと思ったでしょう?
で、あなたは常にそうしてもらってきたでしょうか?
そして、あなた自身はいつもそうしているでしょうか?
そうしてもらってきて、今そうしているあなたは素晴らしい組織で働いています。
けれども、気が付けば「とりあえずやっといて」という言葉が社内で飛び交っているようなら、あらためて社内と自分を振り返ってみてはいかがでしょう。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)