リモート環境では、エンゲージメントに加えて、成果報酬の必要性が高まる
ソーシャルディスタンスの必要性が求められる中、これまで以上に、密接な関係作りが重要視されてゆくと思っています。
ほとんどの人たちとは一定距離を持ってつきあうけれど、良く知り合っている人とは密接な距離で付き合っていくことです。
ただ、それはハードな側面とソフトな側面に分かれてくるでしょう。
重要なことは、物理的に距離をおいていたとしても、心理的に近しい距離にあることです。
密接な距離でつきあうクローズコンタクトは、心理的な距離を縮めることによって実現します。
企業におけるクローズコンタクトは、メンバーシップやエンゲージメントという言葉であらわされてきました。
このうち、メンバーシップはハードな側面でも密接であることを求めてきました。
その一方でエンゲージメントは、ソフトな側面を重視した考え方です。
たとえば経営者との距離や情報のやり取り頻度など、コミュニケーションの改善によって、企業とのソフト面での距離が縮まっていくというものです。
ただ、それだけがクローズコンタクトの方向ではない、と私たちは考えています。
物理学者でありベンチャー経営者でもあるサフィ・バーコールは、「ルーンショット」という著書において「イノベーションの方程式」という概念を示しています。彼はカルチャーよりもストラクチャーの方がイノベーションを引き起こすのに重要だと説き、「目の前の仕事への集中」「目の前の仕事からの報酬」「少ない組織階層と多くの同僚」などが必要だといいます(同書の中では別の言い方ですが、私たちなりに言いかえてみています)。
それらをさらにシンプルに示すなら「対価を明確にすること」とだと言えます。
もちろん対価の重要性はエンゲージメントの基準においても示されています。ただ、エンゲージメントが語られるとき、コミュニケーションの側面が過度に強調されてきた傾向があることは否めません。
だからクローズコンタクトを促進するための手法として、コミュニケーションの改善と対価の明確化は同時に考えなければいけないものではないでしょうか。
そして対価を明確にすることとは、昇格による昇給ではなく、それぞれの期間において設定したゴールを達成した際の利益配分などを明確にすることであり、成果報酬をはっきりさせることに他なりません。
密接な関係性(クローズコンタクト)のためには、コミュニケーションによる信頼獲得と同様に、正当な報酬を分かち合うことが重要なのです。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)
※この記事は2020年4月20日に、セレクションアンドバリエーションのメルマガとして配信したものに一部修正を加えたものです。