部下へのフィードバックの効果的な進め方 ~ダメ出しをしても行動につながらない理由~
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フィードバックと人事面談は何が違うのか
ヤフーの1on1ミーティングが書籍で紹介された2017年頃から、面談手法としてのフィードバックが導入されるようになりました。それまでも人事評価などを目的とした面談はあったのですが、たいていこんな不満が口にされていました。
【上司側】
・いそがしいのに、わざわざ面談の時間なんかとれない。
・褒めることも叱ることもタイムリーにやっているからそれで十分だ。
【部下側】
・どうせずっと説教か自慢だけなんだから面談なんていらない。
・そもそも私の仕事ぶりを知っているわけでもないのに何を面談するのか。
上司と部下、それぞれの言い分は異なりますが、少なくとも「面談なんてやったって意味がない」ということについては共通していました。
けれどもヤフーの事例が評判になるにつれ、フィードバックという手法を使えば面談も効果があるらしい、ということが広まり始めました。そして多くの会社でフィードバックの手法が取り入れられてゆきますが、従来までの面談との違いを強調する意味でも、以下の点が重視されていました。
開催回数が多い
:人事面談は半期に1回が基本だったが、フィードバックは少なくとも四半期に1回。多くの場合は毎月以上の頻度で行われるようになった。
コーチング手法の採用
:部下の話を丁寧に引き出す傾聴の手法が導入された。上司側から一方的に通達する面談ではなく、何が課題で、何をしていくのか、ということを聞き出すように実施された。
そうして広まったフィードバックですが、人事コンサルタントとしての私の実感としては、うまく言っている会社が半分、そうでない会社が半分、といったところです。その違いはどこにあるのでしょう?
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失敗するフィードバックは「気が向いた時」に「一方通行」
失敗しているフィードバックの現場を見ると、たいていが同じ原因をはらんでいます。
フィードバックを失敗させる第一の原因は、上司側の気が向いたときに行われていることです。「忙しいから」という理由で人事が定めているタイミングや回数を守らないためにそうなるのですが、その結果フィードバックのすすめ方が極端になりがちです。
上司が忙しい場合には部下も忙しいことが多いので、せっかくのフィードバックの場が形式的に終わってしまうことがあります。そのようなフィードバックだと開催の意義が低下するので、さらに頻度が減ってゆきます。
また忙しい上司が部下の状況を十分に把握しきれていない場合、フィードバックの場がクレームの場になることがあります。そのようなフィードバックは、予定していた時間を超えてしまい、かつ尻切れトンボになったりします。上司側は面倒な気持ちになって次の開催を延期したくなるでしょうし、部下側はやはりフィードバックに意義を見出せなくなってしまいます。
このようなフィードバックの現場では、上司側が一方的にダメ出しをするか、部下側が一方的に不満を言い続けるか、どちらかのパターンになりがちです。
結果として「気が向いた時」に「一方通行」のフィードバックとなってしまい、むしろやらないほうがましなくらいの結果を導くようになってしまいます。
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成功するフィードバックは「予定より多め」で「聞くだけ」
ではフィードバック手法を成功させている会社は、どんな風に運用しているのでしょう。
成功している会社でフィードバックのタイミングを聞くと、もちろん定期的にしっかり開催していることが多いのです。しかし失敗している会社と同様に「気が向いたとき」という答えが返ってくる会社もあります。ただ、一点だけ違うのが、気が向く回数が多いのです。
たとえばある会社では、人事から四半期ごとに開催してください、と言われているにもかかわらず、平均開催頻度は1か月半おきだったりします。また別の会社では、毎月開催を指示されているけれども、可能な時には隔週で実施することもあります。
また、開催時のフィードバックの進め方ですが、傾聴「しか」していないことが多いようです。上司からの不満も、部下からのクレームもなく、部下側が話す事実について、上司がうなずいたり質問したりするだけだったりするのです。肩の力が抜けた感じで、スムーズにフィードバックが実施されていることが大半です。
こんな進め方でフィードバックがうまくいくのか?と疑問をもつ人もいるかしれません。けれどもこれがうまくいくのです。
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そもそもフィードバックの目的はなにか
ダメ出ししたりクレームを聞いたりするフィードバックが失敗し、肩の力を抜いて事実を確認するだけのフィードバックが成功するのはなぜでしょう?
それはフィードバックの目的が「自発的な行動を促す」ことにあるからです。
ダメ出しは上司からの指示や強制となるため、自発性は生まれません。部下の不満を解消したところで行動にはつながりません。自発性は事実の確認を踏まえた気づきによってのみ生まれるのです。そして人は誰かに言われてきづくのではなく、自分で気づくことしかできない生き物です。傾聴を軸としたフィードバックのすすめ方はその目的のためにうまく機能します。
そして開催頻度が多くなるほどに、気づきのタイミングは増えてゆきます。結果として間違った行動をとる期間が減り、結果を生み出すための適切な行動が増えるようになります。
正しいこと、ではなく、気づくことを目的として、フィードバックをぜひ運用してみてください。