第一印象で採用してはいけないたった一つの理由
面接官の眼力で採用は決まる?
優秀な人を採用したい、という思いはどの会社でも共通する思いです。
きっとあなたの会社でもそうですよね。
では毎年、満足のいく優秀な人を採用できていますか?
優秀な人を採用するために、会社ではわざわざ採用の担当者を定めたり、採用専門の部署を作ったりもします。
面接官をしっかりと選び、採用のための基準もはっきりと決めます。
なのに、面接官によってはこんな意見を強く示す人もいます。
「結局細かい基準を決めたって、面接の場で確認しきれないよ。出来るやつは一目でわかるからそれでいいでしょ」
「受け答えがしっかりしているかなんて対策をされたらそれまでだから、総合的にはやっぱり印象じゃないかな」
そう言って、せっかくの面接シートの基準欄は空欄のまま、「採用」「不採用」のところにだけ〇をつけたりします。
一目で決めて成功した例
一目で決めて成功した例は確かにあります。
あるチェーン店で新卒採用を開始したときのこと。
採用基準を定めて、採用判断を面接官に依頼しました。
面接官にはベテラン店長を複数選びました。
しかし返ってきた面接シートには結論しか書かれていません。
面接官たちは口々に、個別採点は面倒だ、とか、そもそも一目でわかるよ、とかの言い訳を口にします。
採用担当としては、上役にあたる彼らに対して言い返すこともできないので、そのままの判断結果で合否を決めて役員面接につなげました。
結果として、ベテラン店長たちが一目で決めて選んだ人たちは、ほぼそのまま役員面接でも合格しました。
役員達もこんなことを言います。
「やっぱりできる人は一目でわかるね。今回はいい人材がそろっているから安心だ」
採用担当としては、せっかく作った基準が使われないままでいいのかな、とも思いますが、役員に褒められたので悪い気はしません。
そうして内定通知を出して、来期に仲間となる人達が決まりました。
実際に彼らは入社後、順当に活躍してゆきました。
一目で決めて失敗した例
しかし翌年、同様の基準で採用したところ、大きな問題が生じました。
印象で採用した彼らが、いくつもの問題を起こしたのです。
ある人は、とにかくお客様対応がなっていません。
面接の場では気付けなかったのですが、お客様に対してすぐに対等な口利きをしてしまうのです。
これに対して注意したところ「親しみをこめているだけです」と考えを変えようとしません。
また別の人は、細かい仕事をなかなか覚えられませんでした。
やがて彼は周囲からも外れてしまうようになり、メンタル問題で休職。
その後会社を訴えます。
その年に限ってということであれば、「今回の新卒はハズレが多かった」という認識でよいかもしれません。
しかしたまたま良い人材が集まった初年度以降、この会社の新卒採用はことごとく失敗します。
新卒の1年目離職率は50%を超え、そもそも新卒採用なんてムダじゃないか、ということにもなりそうでした。
ちょうどこの会社で、社員向けの評価報酬制度を設計していた私は、採用基準だけでなく、採用時の面接方法について指導が必要だと考えました。
良い人材を見極めるのは、第一印象だけでわからない行動を確認する必要があるのです。
それはあるタイミングで、特に重要です。
採用基準はなぜ設定するのか
一目で決める。
素晴らしい眼力の持ち主という存在がいるとすれば、あらゆる判断基準は不要です。
しかし人間の判断基準は、あくまでも自分の経験に沿ったものでしかありません。
もしずっと右肩上がりの状況が続いていて、仕事の内容も特に変わらないのであれば、経験のある上司は「一目でわかる眼力」を持っているかもしれません。
なぜなら日々の仕事の中で活躍している人たちと同じような行動をとれそうな人を選べばよいからです。
しかしもし、環境が激変し始めていたら?
事例に示した会社では、ちょうど2年目から業界の動きが大きく変わっていました。
法規制が変わり、お客様の行動が変わり、そして店舗での営業スタイルも変わっていきました。
たとえば店舗での接客は従来「親しみやすさ」が重視されていたのですが、お客様の行動が変わることで「礼儀正しさ」が重視されるようになっていきました。
また、仕事の仕組みがどんどん新しくなることで、教える側も混乱していました。
だから新人からすれば何を覚えればよいかがわからないこともありました。
つまり、環境変化が大きいタイミングでは印象で採用することはお勧めできないのです。
それよりも採用基準を定め、採用基準を確認するための面接時の質問方法を定めて、そのことを面接官に周知徹底することが重要なのです。
事例に示した会社でも、面接官教育を徹底しました。
その結果、そもそも印象で採用するという判断自体が自然に消えていったのです。
あなたの会社を取りまく環境変化が大きいものか小さいものか。一度考えてみてはいかがでしょう。
月刊アミューズメントジャパン記事より