アフリカ民話を読んでいろいろと考えさせられました
先週、大阪の阪急百貨店で、ティンガティンガアートの実演を見ました。
そこで売っていた、アフリカ民話の本を買いました。
アフリカの民話~ティンガティンガ・アートの故郷、タンザニアを中心に~
口伝を書きおこしている素朴な内容に、ティンガティンガアートの挿絵が印象的です。
グリムの原典に近い感じで、ストーリーにも救いがないものが多い。
それがまさに本来の民話、という感じでとても良いのです。
「猿女房」という話に特に感じ入りました。
貧しい猿たちがあるとき、魔法を使って、一番美しい娘の猿を人間にしました。
その娘を、人間の富豪のもとに嫁がせました。
それから猿たちは、嫁がせた娘を通じて、富豪の食料を食い荒らし始めます。
妻がもともと猿だと知らない富豪は、食料をうばってゆく猿たちに業をにやします。そして猿退治を命ずるのですが、猿だった娘はそのことを猿の父や兄に伝えませんでした。
その結果、父や兄たちはほうほうの体で逃げ出すことになります。
しかし、その夜……
オチはぜひ読んでいただければと思いますが、救いがありません。
でも、考えさせられます。
民話の中での猿たちの行動原理はこういうものです。
・富豪からは奪ってもよい
・奪ったもので自分たちは楽しめばよい
・なくなればまた富豪から奪えばよい
・猿出身の者はいつまでも猿であったことを思い出さなくてはいけない
・出身を忘れて裏切るものは罪人であり、罰を与えなければいけない
・罰を与えた結果、自分たちがさらに落ちぶれたのなら、罪人をさらに痛めつければよい
なんとも言えない読後感です。
他の作品も、じわりとくる話ばかりでした。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)