あしたの人事の話をしよう

人事コンサルタント 平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

まじめな話と、雑感(よしなしごと)とがまじっているので、 カテゴリー別に読んでいただいた方が良いかもしれません。 検索エンジンから来られた方で、目当ての記事が見当たらない場合 左下の検索窓をご活用ください。

ジョブ型になるとワンチームであることの重要度が高まる

会社の人事の仕組みのお話です。

円陣を組む人たちのイラスト(会社員)

 

コロナによるリモートワークで、人事制度・運用の界隈ではあらためて「ジョブ型の仕組みが必要だ!」的な論調が強くなりつつあります。

つい先日もグロービスHRMの講義でそんな話をしました。

 

もちろん「メンバーシップ型にも良い点はたくさんある!」ということも事実です。

 

受講生の一人が中国の方なんですが、中国ではジョブ型が基本だと。けれども、今や大企業となった多くの会社の創業メンバーたちはメンバーシップ型だと。

 

なるほど、ジョブ型のはずの組織の経営層がメンバーシップ型というのはとても興味深い。

 

で、そのあたりで私自身も混乱してきまして、ジョブ型とメンバーシップ型って対義語になるんだっけ、と。

 

多分違うんですよね。

 

結局のところメンバーシップ型というのは日本固有の仕組みについての説明でしかないわけです。

「新卒一括採用年功序列終身雇用+会社都合転勤サービス残業アリアリ奥さんは専業主婦でお願い」みたいなことの言い換えなわけですよ。

それに対して世界標準をジョブ型と言っていわけですが、じゃあ諸外国の企業の創業者メンバーたちが今も残って頑張っていることをメンバーシップ型もあるよね、と言っていいのかと言えばそうではないと思ったのです。

だって、企業創業メンバーたちが年功で給与が増えていくわけでもないですし。

 

それはメンバーシップ型ではなく、最近はやった言葉でいえば、ワンチームになることであり、たとえばビジョンやミッションに基づいて同じ方向を向いている状態なわけです。

つまりジョブ型だとかの定義と関係なく、組織には「一体感」が必要だ、ということなんですよね。

みんなで一緒のゴールに向かってそれぞれの強みを生かしながら頑張っていく。

それが一体感であって、むしろジョブ型の方にそれがあると思うのです。

 

たとえばメンバーシップ型で終身雇用で年功序列だから、社内政治ばかりやって同じ方向を向いていない人たちの集団、なんていくらでもみかけられます。

 

そもそもメンバーシップ型は、終身雇用と年功処遇を補償することで生活を安定させ、安心して働くことができるようにした仕組みでした。

それによって社内の一体感を高めようとしたのです。

みんなが貧しくて、社会が成長している状態ならそれでもよかったのでしょう。

 

けれども社会全体が裕福になった今、求められる安定の内容が変わってきています。

より高いレベルの安定が求められるとともに、一体感は一時的なものになる場合も見えます。

生活すべてをささげた一体感、というものは、起業直後などのごく一部の組織ステージをのぞけば望むべくもありません。

 

だとすると、むしろ今まで以上に、一体感醸成のための取り組みが必要になります。

それはエンゲージメント向上と、成果責任を明確にするジョブ型組織によって実現しますが、それらをつなぐものが、人事制度に他なりません。

5月末のHRカンファレンスや、6月以降のセミナー等で、それらの情報を順次発信していきます。

 

 


平康慶浩(ひらやすよしひろ)

クローズコンタクトではコミュニケーションより対価が重要になる

ソーシャルディスタンスの必要性が求められる中、これまで以上に、密接な関係作りが重要視されてゆくと思っています。

ほとんどの人たちとは一定距離を持ってつきあうけれど、良く知り合っている人とは密接な距離で付き合っていくことです。

 

ただ、それはハードな側面とソフトな側面に分かれてくるでしょう。

 

重要なことは、物理的に距離をおいていたとしても、心理的に近しい距離にあることです。

密接な距離でつきあうクローズコンタクトは、心理的な距離を縮めることによって実現します。

 

企業におけるクローズコンタクトは、メンバーシップやエンゲージメントという言葉であらわされてきました。

このうち、メンバーシップはハードな側面でも密接であることを求めてきました。

 

その一方でエンゲージメントは、ソフトな側面を重視した考え方です。

たとえば経営者との距離や情報のやり取り頻度など、コミュニケーションの改善によって、企業とのソフト面での距離が縮まっていくというものです。

 

ただ、それだけがクローズコンタクトの方向ではない、と私たちは考えています。

物理学者でありベンチャー経営者でもあるサフィ・バーコールは、「ルーンショット」という著書において「イノベーションの方程式」という概念を示しています。 

 

彼はカルチャーよりもストラクチャーの方がイノベーションを引き起こすのに重要だと説き、「目の前の仕事への集中」「目の前の仕事からの報酬」「少ない組織階層と多くの同僚」などが必要だといいます(同書の中では別の言い方ですが、私たちなりに言いかえてみています)。

 

それらをさらにシンプルに示すなら「対価を明確にすること」とだと言えます。

 

もちろん対価の重要性はエンゲージメントの基準においても示されています。

ただ、エンゲージメントが語られるとき、コミュニケーションの側面が過度に強調されてきた傾向があることは否めません。

 

だからクローズコンタクトを促進するための手法として、コミュニケーションの改善と対価の明確化は同時に考えなければいけないものだと、私たちは考えています。

 

そして対価を明確にすることとは、昇格による昇給ではなく、それぞれの期間において設定したゴールを達成した際の利益配分などを明確にすることであり、評価・報酬制度の見直しに他なりません。

 

密接な関係性(クローズコンタクト)のためには、コミュニケーションによる信頼獲得と同様に、正当な報酬を分かち合うことが重要なのです。

ただこれはもちろん、払う側だけでなく、受け取る側が成果を出し続けることと併せて考えなければいけません。

 

余談

対価といえば「等価交換」か「贈与」か、が連想されたりします。

この漫画とか。 

 

この本とか。 

 

 

 

平康慶浩(ひらやすよしひろ)