「金塊ロジック」で「お金の量」を考えてみた
自分の頭の整理のために、「金塊ロジック」(by平康)でいろいろと考えてみます。
今回はマネーサプライ(あるいはマネーストック)についてです。
「金塊ロジック」(by平康)とは、2013年9月28日のこの記事に書いた内容を、単純にネーミングしたものです。
調子にのって、(by平康)と書いてみました。
お金のカラクリがやっとわかってきた……気がする
http://hirayasu.hatenablog.com/entry/2013/09/28/190455
さて、現在、日本銀行が印刷した通貨がどれくらい世界に流通しているか考えてみます。
大丈夫。日本銀行の調査統計局、というところが毎月きっちりと発表してくれています。
M1、M2、M3という区分があるんですが、このうち、M1が現金+銀行預金残高の合計です。
中でも現金だけ、として考えると、
2013年8月実績として、日本円は79.8兆円、紙幣や貨幣で存在します。
1万円札で79.8億枚ですね。
では、現在日本は国として、金をどれくらい持っているのでしょう。
「とあるデータ」によると、2013年8月に、765.06トン、だそうです。
1g4,373円で考えると、日本が国として持っている金は、時価約3.3兆円。
ちなみに「とあるデータ」では3.4兆円として計算しています。
あれ?ずいぶん少ないですね。
もちろん、管理通貨制度のもとで発行されていますから、単純比較なんてできるわけもありません。
でも、もう少し、金塊ロジックで考えてみましょう。
通貨の信用力を測るには、金保有に加えて、外貨準備高も重要です。
このデータは、財務省が発表してくれています。
2013年8月データでは、1,254,204百万ドル。
約1.25兆ドル。
1ドル100円だったら、日本が持っている外貨は125兆円です。
じつはこの財務省データが、上記の「とあるデータ」です。
金保有量も実は外貨準備高の一要素として計算されています。
なるほど、125兆円も持っているんだから、79.8兆円の「円」が流通していても大丈夫!
と思えそうです。
現実は、そんな状況ではありません。
「金塊ロジック」で考えると、とても不思議な状況がわかってきます。
仮に79.8兆円の「円」をすべて金とかドルとかに変えたい!と全国民が言い出したとします。
そして日本銀行にそれを持ち込んだとします。
実は日本銀行には、そのために支払える金もドルもありません。
まず、金は3.4兆円分です。
残る76.4兆円分をドルで払えるか、というと無理です。
なぜなら、その内、預金として持っているのは1.87兆円分だけだからです。
さらにいえば、日本国内にあるのは4612億円だけ。
全然足りないですよね。
残る100兆円以上のお金は一体どうなっているのでしょう。
実は100兆円以上のほとんどは、外国の国債とか外国の債権とかその他の証券とか、すぐにお金に変えられない紙なのです。
となるとどういうことになるのか。
もしどこかの国が「日本円ではもう何も売ってあげないよ」と言ったとします。
すると日本から、様々な資産をどんどん持ち出さなくてはいけません。
なのに、金(きん)を持ち出しても、外貨を持ち出しても、全然足りません。
さきほど、円の発行量は79.8兆円だと書きました。
これはあくまでも、実際にモノとして存在するお金です。
日本銀行統計の中の、M1という一番少ない金額の中の、「現金通貨」だけの数字です。
一番大きなM3だとどうなるのか。
M3には、現金以外に様々なタイプの預金が含まれます。
M3は、全部足すと、1160兆円です。(2013年8月)
あやふやな形の債権や証券を足しても125兆円の外貨準備しかない状況で、日本円は1160兆円も流通しているわけです。
こうなるともはや、「金塊ロジック」では説明がつきません。
一体なにがどうなって、「金塊ロジック」の10倍以上の通貨が流通しているのでしょう?
そこに「信用」の秘密があるわけです。
信用の中身は、大きく分けると2つではないでしょうか。
信用の中身の第一は、流通量。
たくさん流通している事実そのものが、信用となっています。
全員が持っている「大事なもの」は、誰か一人がその価値を否定したところで、価値が失われません。
その最たるものがドルです。
仮にドルが通貨として機能しなくなる時代が来るとすれば、それは物々交換か、あるいは異なる信用形態が醸成されたときでしょう。
信用の中身の第二は、発行主体である国の財政状況です。
なぜ財政状況が大事か、というと、多くの国が他の国の国債を買っているからです。
上記の下線太大文字のところに書いた100兆円、という債権とか証券の中身です。
ある国の財政が悪化すると、その国の国債の価値が下落します。
国債を持っていても、紙くずになる。
そうなると外貨準備高も少なくなる。
外貨準備高が少なくなると、我が国の通貨の信用も落ちるじゃないか、
こりゃたまったもんじゃない、ということで、各国が協調してその国に対して説教をはじめます。
これが2010年のギリシャ危機ですね。
さて、この国の財政の悪化、というのがわかりにくい。
単純に考えれば、財政の悪化とは、国の収入より支出の方が大きい状況です。
でも、「金塊ロジック」で考えれば、支出は通貨を発行すればOKなはず。
「金塊ロジック」よりも甘々な管理通貨制度のもとでは、通貨発行はもっと簡単そうです。
だとすれば、国が財政破たんすることなんてなさそうです。
でも、実際には日本だってかなりやばい。
なぜそんなことになるのか。
次回、整理してみます。
てゆっか、ようやく次回あたりで、私の本業に関係する話になりそうな。
平康慶浩(ひらやすよしいろ)