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あしたの人事の話をしよう

人事コンサルタント 平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

まじめな話と、雑感(よしなしごと)とがまじっているので、 カテゴリー別に読んでいただいた方が良いかもしれません。 検索エンジンから来られた方で、目当ての記事が見当たらない場合 左下の検索窓をご活用ください。

合わない会社を3日でやめてよい理由

 最初に入った会社では3年は勤めあげなさい

 そうしないとどこにいったとしても長続きしません。ということをもっともらしく助言されたのは2000年初頭くらいまででしょうか。


 もちろん今でも「石の上にも三年」派の人はいますが、そうでない人たちが増えていることもまた事実です。実際私が20代の人から助言を求められるときには、「別に3日で辞めてもいいんじゃない?」と答えることにしています

 なぜなら早く会社に見切りをつけて転職や起業をした人の中に大成功している人たちがいるのを見てきたからです。

 そして逆に、最初に入った会社が合わないと感じながらも20年間我慢しながら勤務してきて、結局あわないままリストラされた人たちも見てきたからです。

 結局のところ、どのような選択が正しいのでしょうか。それは「合わない」感覚にどう向かい合うかということになります。

 最初に入った会社で希望の職種につけなかったとか、都心で働けると思っていたら田舎に配属になったとか、上司や同僚に嫌な奴がいて会社に行きたくないとか、いろいろな理由で「合わない」と感じることがあります。

 この「合わない」という感覚を我慢することに意味があったのはなぜなのか、ということを考えると、正しい選択に近づく秘密がわかりそうです。

 

 合わないけれども我慢して身につくものは一体なんでしょう。

 

 忍耐力?たしかにそれはあるかもしれませんが、会社の中の仕組みとして身につくものが三つあります。

 

 第一に、その会社の社風に親しむこと

 第二に、リスクを取らなくて済むことの安心感

 第三に、自然に増えていく給与です。


 そう、一つの会社で我慢して勤めなさい、という助言の背景には、伝統的日本企業のマネジメントがあるのです。

 社風に親しめば、その会社の典型的な従業員になってゆきます。例えば都市銀行でも「あのイケイケな感じはまさにS銀行員って感じだよな」とか「あの堅苦しさはさすがT銀行系」とか「M銀行系は紳士だけれどおとなしいんだよな」と言われたりしていました。いい面も悪い面もあるけれど、それを飲み込んで実践することが社風のあり方だと言えるでしょう。

 そして終身雇用と年功序列が一般的だということは、従業員ではなく会社側がが人事にかかるリスクをとっていてくれていたということです。

 その結果として給与は外資系に比べて多くはないけれど、生活に必要な金額くらいは順調に増えていって、基本的には下がることはない。出世頭とそうでない人との間でも、それほど給与差はつかないので勝ち組負け組的な優越感や嫉妬も生じにくいということがありました。

 だからもしその人がいる会社が伝統的日本企業であるとすれば、そしてその人が入社して定年退職するまでの40数年ほどの間、ずっとその状態を維持していられるとすれば、長く勤めることが正しい選択になるでしょう。

 

 しかしそうでないとすれば?

 その場合には「合わない」の先にあるものを自分で作り上げなければいけません。先ほど示した「身につくもの」の言い換えになりますが、「この会社にいてどんな行動様式が手に入るのか」「回避されるリスクととらなければいけないリスクにはなにがあるのか」「処遇でどのように報われるのか」ということはわかりやすい判断基準です。

 中でも行動様式はとても重要です。

 たとえばチャレンジすることが大好きな人が、何をするにしても3部署以上の稟議を経てからでないと実行できない会社に入ってしまったとしましょう。だとすれば、この会社にい続けることでその人が手にするものは、稟議をしっかりとしてからチャレンジするという行動です。それはチャレンジの成功確率を高めるかもしれませんが、タイミングを逃してしまい結局チャレンジそのものの回数を減らしてしまうかもしれません。

 

 リスクを判断することは行動様式よりも難しいのですが、同時期に別の会社に入社した同期と定期的に連絡をとりあっていればわかるようになります。たとえば大手製薬メーカーの研究開発部門に配属された結果、会社の看板があるのでさまざまな研究会などに出席しやすくなったけれども、社内で担当できるのは雑用ばかりという状態と、ライフサイエンス系ベンチャーに入ったので小さいテーマではあるけれどいきなり責任者として研究をする機会を得ているけれど、自力でコネクションを作らなければいけないという状態。それぞれのリスクを客観的にみられるようになれば、今この会社で頑張るべきかどうかが判断しやすくなります。

 最後に処遇ですが、20代での処遇にはあまり意味がありません。大事なことは未来の処遇です。仕組みで言えば、昇給幅と利益配分が妥当かどうかで判断できます。要はどこまで受け取れる可能性があるのか、成長は認められるのか、ということです。これはお金だけではなく、福利厚生やステイタス的な部分も含めて考えてもよいでしょう。個人的に助言するとすれば、役員手前の段階での年収がどれくらいなのか、ということを基準にして判断してみることを勧めています。

 「行動様式」「リスク」「未来の処遇」という3つの基準で考えていくと、3年という期間の意味は小さくなります。3つの基準すべてがあわないのであれば1日も早く転職するべきでしょうし、1つだけ合わないくらいなら、あとの2つのために今の場所で頑張るほうが良いかもしれません

 そういう基準ではなく、なんとなく周囲の人がそうだから、といってついていってしまうと結果としては残念なことになるでしょう。

 

 

平康慶浩(ひらやすよしひろ)

 

この文章は、2016年5月27日に新たにプレジデント社から出版する本の一部を抜粋したものです。よろしければぜひ全体を読んでみてください。

 

逆転出世する人の意外な法則 ―エリート人事は見た!

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