あしたの人事の話をしよう

セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役 兼 グロービス経営大学院HRM担当准教授の平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

まじめな話と、雑感(よしなしごと)とがまじっているので、 カテゴリー別に読んでいただいた方が良いかもしれません。 検索エンジンから来られた方で、目当ての記事が見当たらない場合 左下の検索窓をご活用ください。

年功昇給がどれくらい減ったかをグラフで確認してみた

年功昇給といわれるものがなくなりつつある、と言う話は僕たち人事業界の人間にとってはあたりまえのことなんだけれど、それを示す公的なデータがないものかと考えてみた。

で、困ったときの賃金構造基本統計調査、ということで、2001年~2014年までの全データをダウンロードしていろいろといじってみた。

昔はたしかに年功昇給だったんだなぁ、としみじみ思ったのがこのグラフ。

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※賃金構造基本統計調査より、従業員100名以上企業、大卒男女合計

 

 

給与はずっと上がり続けているし、いわゆる万年平社員、万年係長でも、残業代を含めた平均年収で800万円以上になってる。

なるほどなぁ。

こんなんだったら、昭和の時代はどうだったんだろう、とか思ったけれど、ネットではここまでしかデータがとれない。昭和33年から調査しているはずだから、昔のデータもあるはずだけれど、多分紙媒体でしかないんだろう。

 

で、最新データの2014年版だとこうなった。

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役職者は45~49歳の段階で給与が下がり始めてる。

そして課長以上の役職についていないと、年収800万円は超えない。

 

ということで、公的データからも、年功昇給が消えつつあることは確認できたわけで、40才以上になったらぼちぼち自分自身の今後について考えてみる必要性が高いことがわかると思う。

 

ただ僕の実感から言えば、この世代の人たちにそれを言ってもあまりわかってもらえないんだよなぁ。

なんとなく「実力を高めれば大丈夫」とか思っている感じがすごくする。

そういう人たちって、若いころは「団塊の世代うぜぇ」「実力ある若手(=自分たち)に責任をまかせろ」とか広言してきたわけなんだけれど、いざ自分が「バブル世代うぜぇ」って言われだしてもなかなか気づけない。

まあ僕もその一人だったりしたわけですが。

 

年功が消えていくということは、ちょうど40代以上の僕たち世代が「会社にはいらない」と言われ始めるということだ。

それは部長級であっても同じで、さらに役員になったところで62歳とか65歳とかで「さようなら」、と言われたらそれまでだ。

実力で判断されるのではなく、仕組みとして不要と言われ始める、ということが脱年功の実際なのだ。まあ、そういう仕組みを作る仕事が人事コンサルタントなわけで、マッチポンプと言われればその通りなんだけれど、それでも環境変化や企業戦略の変化がそれを要求するから仕方がない。

だから僕はいろいろな研修で、「『変化』に『いいね!』と言えるようになってください」と話す。そうすれば少なくとも、変化に置いて行かれることがなくなるからだ。

 

とまあ、なんでこんな分析をしたかと言えば、2015年9月号(たしか7月25日発売)のビッグトゥモローと言う雑誌から取材を受けたからだ。

僕はざっとした環境変化について聞かれたくらいで、具体的にどうすべきか、ということについては、いろいろな専門家のみなさんが答えている。

キャッチーな雑誌だけれど、今回の記事はかなりおもしろいので、ぜひ手に取ってみてほしい。

 

 

平康慶浩(ひらやすよしひろ)

 

 

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【人件費の近未来2-4】 職務給導入時のポイント

(当記事は、月刊人事マネジメント2014年3月号から1年にわたって連載した記事を、2015年の現状にあわせて加筆修正したものです。)

前回記事はこちら。 

 【人件費の近未来2-3】 職務給の課題は運用面にある 

 

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職務給をすでに導入している企業での課題は、職務給の仕組みをまだ導入していない企業が検討する際のポイントになる。

ここまで説明してきたように、職務給の仕組みは労働市場を前提としている。

労働市場のあり方を前提として、企業内の人件費配分を最適化しようとするのが職務給の特徴だ

採用力向上も経営リスク低減も、人件費配分の最適化が目的だからだ。

 

人件費は個人としてみた場合に給与として生活費となり、インセンティブとなり、社会的には消費の源泉ともなるが、職務給についてはあくまでも企業と労働市場との関係で検討する必要がある。

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そうしてみると、あなたの会社で労働市場を活用できるのか、ということが第一に確認すべきポイントとなる。

 

わかりやすい例として「アルバイトの時給」を想像してみてほしい。アルバイト時給は職務給の典型だ。時給相場は職務内容と地域性と市場に出回っている人材の数によって決まる。

 

あなたの会社が職務給を導入しようとするなら、重要なポストにどのような人材を配置したいのかを考えてみよう。

そのときもし「社内で10年以上経験した人材じゃなければ重要な仕事を任せられない」というのなら、あなたの会社のために用意された労働市場は存在しない

そして職務給も導入できない。

 

しかし同じ業界内での人材流動が可能であるとか、業界に関わらず機能別に優秀な人材を採用して適切な仕事をすぐに与えたいのであれば、労働市場を活用できる。そして職務給の導入も可能だ。

 

 

■運用面では給与改定と業績配分に対する答を用意しておく

 

第二の論点は運用面だ。

特に給与改定と業績配分が重要になる。

職務給を適切に運用するためには、少なくとも「滞留年数」や「相対評価による昇給・賞与」を廃止するか、極力その色合いを薄めなければいけない。

せっかく市場相場で採用した優秀な人材に対して、「うちの社員になったんだからうちのルールにのっとって終身雇用、年功序列に沿ってください」と言ったらどうなるのか、誰にでも想像がつくだろう(実際にそんな運用をしている会社も多いのだけれど)。

 

日本の労働市場全般を見渡した時、職務給運用に耐えうる産業は多くはない。

あなたの会社の人材マッチング基準と、給与改定・業績配分の仕組みを振り返ってみよう。

 

 

(第三回は2015年1月中ごろ更新予定)

 

 

平康慶浩(ひらやすよしひろ)

 

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