65才以降の生活を守るために今できること
■ 現役世代の金融資産は減り続けている
ふと気になることがあったので、少し古めのレポートを探して読んでみた。
大和総研調査季報2012年新春号だ。
http://www.dir.co.jp/souken/research/report/capital-mkt/cho1201_05all.pdf
読んでみて、ああやっぱり、と実感した。
60才以上が持っている金融資産は、全体の6割、ということはよく言われている。
しかし、今の30代や40代が60才以上になったとき、そうはならない傾向がこのレポートに書かれている。
一部グラフを抜粋してみよう。
(時期は少し古く、2010年までのものだ)
(大和総研作成グラフ)
上の方の折れ線グラフは平均値で、水色の線は増減傾向をあらわしている。
60歳台の金融資産保有額は「増加傾向」にある、ということだ。
下の方の折れ線グラフは、対象となる人たちの真ん中に位置する人の金融資産保有額だ。こちらでは「ほぼ横ばい」となっている。
2007年以降減少に転じているが、現状ではまだ横ばいか増加傾向にあることがわかる。
では他の年代はどうか、と言うと以下のようになる。
(大和総研作成グラフ)
(大和総研作成グラフ)
(大和総研作成グラフ)
30代から50代のいずれにおいても、平均値も中央値も「減少傾向」にある。
現役世代の金融資産はどんどん減っているのだ。
■定年退職しても金融資産が増えるとは限らない
現役世代の多くはもちろん企業勤務だろうから、彼らがまとまった金融資産を得るのは「退職金」としてだ。
だとすれば、今減っている現役世代の金融資産も、定年退職とともに増えるのか、というとこれはあやしい。
退職金制度は、大きく2つの方向で改革が進んできた。
一つには、Pay NOWの原則にともなう、縮小と廃止だ。
そもそも退職金として払うより、前払いしてしまおう、という発想もここに含まれる(少し古いが1998年にパナソニックが導入した制度が代表例だ。)
もう一つが、確定拠出型への移行だ。
決まった額の退職金を支払うのではなく、決まった額の掛け金を支払ってその運用結果を退職金にする方法だ。
確定拠出型の退職金にはもちろんメリットも多い。転職の際に持っていくことができたりするからだ(もちろん、転職先も確定拠出型の制度を導入している必要がある)。
これらの2つの改革はそれぞれの時代のニーズを踏まえたものだけれど、明らかに一つ言えるのは、定年退職時の退職金額を増やすものではない、ということだ。確定拠出型はうまくすれば増えるけれど、今はまだ、拠出できる金額が少なくて、それほど大きな退職金にはなりづらい。
だから、今の現役世代が60才で定年退職したとして(あるいは65才まで再雇用なり定年延長されたとして)、今の60台ほどの金融資産を持てない可能性は高い。
■金融資産がないなら、稼がないといけない
介護保険制度の抜本的改革は難しそうだけれど、最近ではロボット活用も進みだしていて、10年後には介護ロボットも当たり前になるかもしれない。
要介護にならなくても高齢になると医療費がかかる。高度先進医療が拡大していけば、お金があればかかれる治療も増えていく。そして医療費制度はどんどん厳しさを増している。
僕たちが年をとっていくと、お金がかかるようになる。
でも、そのために支払える十分なお金がない人も増える。
年金だけでそれらのお金をまかなうことも難しくなる。
最近15年間の厚生年金額の支給額推移は以下のようなものだからだ。
(セレクションアンドバリエーション作成)
となれば、今の40代や50代が60代を越えたとき、年金以外の収入の道を確保しなくてはいけない。
65才までの再雇用は義務化されたけれど、65才以降も働ける場所が必要になってくるだろう。
■自分が生み出せる価値を見極める
今現実的に65才以上を受け入れている職場はほとんどない。
あっても、一時的な調査員とか、サービス業のアルバイトなどだ。
少子化が進んでいるので、その代わりとなる労働力、として65才以上の人たちを活用する選択肢はあるだろう。
コンビニや居酒屋のスタッフに65才以上の人が多い地域もすでにある。
でも、もっと本質的なことを考えるタイミングに来ていると思う。
働いてお金を稼ぐ、と言うことの意味だ。
それは、誰にでもできる仕事をして、お金をもらう、ということではない。
どんな価値を生み出せるのか。
その対価として受け取るものが報酬だ。
だからこそ、まだ40代の頃から、自分がどんな価値を生み出せるのかを考えていかなければいけない。
そして、気づいていなかった、自分の価値を再確認して、より高めていかなければいけない。
その取り組みは、50代でも、60代でも遅すぎるということはない。
以下の本の中に、そのための、自分の価値を棚卸するためのシートを紹介した。
棚卸しのためのシートをダウンロードするページも末尾に紹介しているので、一度手に取ってみてほしい。
タイトルでは「出世」と言う言葉が目立っているが、企業の外で生きること、自分らしく生きることを含めた「出世」として書いている。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)
5分間で出来る初対面でリーダーとみなされる方法
今回は初対面でリーダーとみなされる方法についてお話します。
(就活をひかえている学生の方、グループディスカッションなんかでもとても役に立ちます!!)
とはいっても、身なりや素振りのような外見的な面ではなく、心理的なアプローチをうまく使った方法です。
まずその前に、
人口統計学的に重要であることがわかっている属性的要因についてご紹介します。
リーダーシップに関して、(欧米の企業では)一般的に以下のような属性が有利であるとされています。
○ 年齢:40歳程度
○ 性別:男性
○ 人種:白人
○ 容姿:背が高く、美形である
○ 性格:自信があり、外交的である
つまりは「イケメンでダンディなWASP(White Anglo‐Saxon Protestant)」ということでしょうか。
確かにこんなデキル男がいたら、男同士でも惚れ惚れしてしまうかもしれません。
でも、このような属人的要素は今さらどうしようもないこと……
しかし、最初のミーティング前の5分間に簡単なマインドセットによる誘導を行うだけで、リーダーステイタスを獲得し、またその後もそれを保持する確率を高めることができるのです。
※マインドセットに関する実証研究については、コロンビア大学MBA、アダムD.ガリンスキー教授が面白い実験結果を発表しています。(Harvard Business Review/May 2014/p130-136)
そのマインドセットの方法はとても簡単です。
大事なミーティングや面接の前に、手近な紙に数行の文章を書くだけです。
では何を書くのか?
① 大きな目標や一生のうちに実現したいこと
② 他者と比較して自分には力があると感じた出来事
③ ワクワクしたり、楽しいと感じた経験
この①~③のうち想像しやすいものを一つ選んで、具体的にイメージしながら、自分の思いを書きましょう。
ただそれだけでいいんです。
これなら、本当に5分間でできてしまいますね。
この方法、実は人間の行動根幹にアプローチする方法です。
心理学上、人間の行動根幹には「回避モチベーション」と「接近モチベーション」の二つのモチベーション・システムがあります。
このうち「接近モチベーション」を事前に高めることで、その後の対人関係に有利に働く(価値ある人物とみなされる)確率を高めるという理論です。
わかりにくいですね。
簡単に言い換えてみましょう。
①~③を想像し紙に書くという作業は、あなた自身の心理状態に影響を与えます。
するとその影響によって、脳の左前頭部を刺激されます。
刺激はストレス・ホルモンのコンチゾールを減少させます。
その結果、楽観的傾向と自信が増すのです。
そして、精神的・ホルモン的・心理的な効果として、行動が変わってしまうのです。
そう。「過去の成功体験を思い出し、前向き思考に変換された」行動を取れるようになるです!
実際、ケルン大学やノースウェスタン大学で行われた研究では、マインドセットにより学生の面接合格率が向上したという研究結果があるようです。
また、サンディエゴ州立大学ではマーガレット・サッチャーのスピーチの音響解析が行われ、彼女がイギリスの首相になる前後(マインドセット・トレーニングを受けたとされる前後)を比較してみると、トレーニング後の方が話す速度が安定し、声の強弱の幅が広がり、信頼感のある話し方に変わったという検証結果も出ています。
「でも、そんな付け焼刃じゃ長続きしないでしょ」と気づいた方。
あなたは正しい。
確かに、実力がなければいくらマインドセットを良くしても「ポジティブだけど仕事はできないヤツ」という大変悲惨な評価を受けてしまいます。
しかし、意外にもこのマインドセットの効果は長期間続きます。
正確にいうと、マインドセット効果自体は暫くすれば消滅しますが、副次的効果が発生するのです。
新しく作られたグループでは、チームのヒエラルキーがすぐに構築され、さらにそれを固定化するパターンが生じるため、初期に形成されたリーダーポジションを維持する作用が副次的に生まれるのです。これはピグマリオン効果(生徒は人から期待されるほど意欲がわき、成績があがる)とよく似ています。
つまり「あいつはできそうなやつ」というキャラが最初に与えられるのです。
副次的に発生するこのキャラクターは、意外に長続きします。
人間はカテゴリー化と、その後のステレオタイプ化が大好きだからです。
特に日本社会ではその傾向は顕著かも知れません。血液型占いが根強く信じられているし、そもそも「キャラ」という言葉だって日本で生まれた概念ですから。
「あの子は秀才ちゃん」で「あいつは運動バカ」という学生時代の友人に対するキャラクター付けは、思いのほか初期に形成され、その後の見直しはあまり行われないものです。
同窓会で久しぶりにあっても学生時代のキャラがそのグループ内において変わらないのも、これが一つの要因になっています。
第一印象を与えるチャンスは一度しかありません。
グループメンバーと出会う前の5分間で、その後のグループ内の自分のポジションは既に決まっているかもしれません!
セレクションアンドバリエーション株式会社
ヒューマンリソース アナリスト 桑原 慎輔
(参考文献)
『初対面でリーダーと目される方法』アダム.D.ガンリスキーHarvardBusinessReview 2014年5月号