フリーランスが組織をつくるということ
大企業といわれる組織を卒業して、コンサルタントとして独立して6年ほどになる。
最初の頃はほぼ個人だったので、目標は組織に勝つことだった。
たとえばある会社から人事制度設計についての見積もり依頼が来る。
他社にも声をかけていると聞き、その会社を聞けば●●経営とか△△コンサルタンツとか。大企業にいた頃には、正直歯牙にもかけなかった先が競合になった。
そりゃもちろん僕が勝つだろう、と高をくくるわけだけれど、負けることも多かった。
理由を聞いてみた。
「平康さんはお一人で来られましたが、●●経営は5名で来られましてね。安心感がある、ということが決定要因でした」
それって役に立たないおっちゃんとか、ぺーぺーの新人連れてきてるだけじゃん。
似たようなことは大企業時代にさんざん見てきたので、からくりはわかってる。
けれども負けは負けだ。
だから僕は、個人として組織に勝つことを目指した。
具体的に言えば、以下の要件を満たすことだ。
・指名で仕事を受ける。
・現時点の競合先よりも高い単価で仕事をする。
(さすがに僕がいた外資系ファームクラスの単価はとれない)
・相見積とかとられない。
結果として目標は達成できた。
意外なことに、指名を受ける元は、見込み客ではない、ということもわかった。
多分それがフリーランスが成功する要因の一つなんだろう、ということもわかった。
そして昨年くらいから僕の目標は、変わった。
組織として、組織に勝つこと。
これが難しい。
考えてみれば、個人が組織に勝つことはそれほどむずかしくないのだ。
なぜなら、個人対組織の戦いは、局地戦だからだ。
それも、個人側が戦うフィールドを選べる。
そうすれば戦う相手は、組織ではなく、そのフィールドで戦っている組織の中の一部の人たちだ。その人たちに勝てば、個人対組織の戦いに勝ったことになる。
特定のニッチなジャンルで名を広めるとか、ある領域では常に検索上位に来るとか。そういう状態をつくることができれば、強い個人になることはできるのだ。
けれども組織対組織になると違う。
なぜなら、すべての戦いに僕が出るわけにはいかなくなるから。
僕が持っているノウハウを、誰にでも使える武器に変えなければいけない。
従業員たちの特性にあわせて、戦い方を教えなければいけない。
時には敗れることも許容しながら、一人一人を成長させなければいけない。
そして、彼らの中から独自のノウハウを生み出す状態をつくりださなければいけない。
そうして出来上がった組織が、他の組織よりも強い状態にしなければいけない。
その状態とは、ビジョナリーであり、ラーニングオーガニゼーションであり、すぐに動ける組織だ。
そのためには、自分自身がプロフェッショナルとして成長するために行ってきたことと、大きく違うことを進める必要がある。
だから面白い。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)
タイトルがなんとも
毎度おなじみ日経スタイルの連載。
分業に対する疑問を呈した記事なのだけれど、タイトルが難しかった。
そしてやっぱり変更になってる。
原題は「人生100年時代には、会社が指示する分業を疑う」というもの。
これはこれでイマイチだ。
短い文章で本質をつくのは、なんとも難しい。
ちなみに蛇足として書いておく。
僕の記事は分業を否定している。けれどもそれに対する反論はもちろんあって、得意なことに特化しなければ成長しづらい、というものなどがある。
それらは、行ったり来たりするものだと考えている。
グロービスの講義でも言っているのだけれど、特に社会科学領域では、誰かが示した意見をうのみにしない方がいい。疑問をもって反論し、そして自分のものにした方が良い。
さて、来週は何を書こうか。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)