居酒屋激安戦争で倒れるのは個人店と小規模チェーン
「居酒屋」の倒産、過去最多 消費者の低価格志向で競争激化
産経新聞 2月14日(月)18時47分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110214-00000593-san-bus_all
この記事、
『低価格競争が激化しているから体力の無い企業が倒産する』
と読んでいいのでしょうか? 評論家ならそれでもいいかもしれませんが、厳しい市場を生き残りたい居酒屋の経営層がそう読み取ってしまうと少しまずいことになりそうです。
【間違った読み方】
まず間違った読み方を記してみましょう。
単純にグラフから読み取れる情報だけを信じるものです。
2005年~2008年にかけては倒産件数も増えるけれど、負債総額も増加。
しかし2008年以降、負債総額は減っているけれど、倒産件数はほぼ横ばい。
ということは?
2008年の倒産に比べて、近年の倒産では一店舗あたりの負債額は減少しているわけです。
言い換えると、倒産する企業、店舗の小型化が進んでいる。
このことと低価格競争の激化とをあわせて考えてみると、企業体力のないところから倒産している、と読み取れるかもしれません。
【セレクションアンドバリエーションはこう考える】
果たしてそうでしょうか。
グラフからはここまでしかわかりませんが、セレクションアンドバリエーションがお手伝いしている居酒屋チェーンの現場を見ていると、より本質的な原因があることが推測されます。
低価格競争が生じる背景には、同質の商品を同じ顧客に提供する市場が前提として必要です。
質が変わらないから、あるいは顧客がその質よりも高い物を求めていないから、価格のみが差別化要因となる。
そこで価格を下げるための体力がある企業が勝ち残る、というものが競争戦略の基本です。
しかし私たちがお手伝いしている企業の中で、対前年比20%以上の成長を遂げている居酒屋チェーンがあります。もちろん店舗数が一桁などの小さなチェーンではありません。
この企業が伸びている理由を探ってみると、その勝因は企業体力にありません。
その勝因をつくるお手伝いをしてきた結果、倒産する企業とそうでない企業をわけている原因は、基本的な経営ができているかどうかにある、と私たちは判断しています。
例えば、食材原価管理をどのようなサイクルでどのような精度で行っているか、レイバーコントロールのためのシフトコントロールと賃金テーブルをどのように設計しているか、それらを徹底する店舗運営体制と経営管理のための会議体をどのように運営しているか。
また、出店後24ヶ月以上の店舗群、出店後23ヶ月~12ヶ月までの店舗群、出店後11ヶ月以下の店舗群についての業績基準設定をどのようにするかも重要なポイントです。
さらにドミナントエリアと新規出店エリアそれぞれに対するブランドマトリクスと管理体制構築など。
経営者自身が常に過去と現状を否定しながら活躍され、経営幹部だけでなく、アルバイトまでを含めた従業員の声を聞き、私たちのような外部の分析や見解にも耳を傾ける姿勢があれば、この競争環境を成長環境に変えることができる。
その実例を今まさに見ているからこそ、多くの方々がマスコミ報道に誤解されないようご提言させていただきます。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)