あしたの人事の話をしよう

人事コンサルタント 平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

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人を活かす人材マネジメントとビジネスモデル(2)

前回の続きです。

私が持っていた疑問に対する答えは、赤ちゃんにありました。

テレビCMを見ていたのです。
おむつのCMで、赤ちゃんがはいはいしています。
それを見ながら、ふと、考えたのです。

この赤ちゃんは、親がいなければ生きていけない。
自分自身で衣食住を確保できるわけではない。
その意味では、能力は極めて低いと言える。

しかし、CMに出ることでいくばくかの収入を確保できる子もいる。
(多くの赤ちゃんCMは出演料がないそうですが)
それは、赤ちゃんの能力、だけでなく、特性(愛らしいとか)によるものかもしれない。
でも、例えば赤ちゃんの役割を、イケメン俳優が代わりにできるわけでもない。

そうか、役割か。

企業における人材マネジメントで言うなら、最適配置か。

最適配置によって、能力が低くても収益を生み出せるような役割を任せられないか。

これは堅苦しく言えば、「社内労働市場の形成」になります。
終身雇用が前提であった企業においては、この社内労働市場がありました。
また、外資系企業など、社内転職を活性化させている企業もあります。ある事業部から別の事業部への転属を、従業員側が選択できる仕組みです。
この、社内労働市場、言い換えると社内転職の仕組みを持つ企業であれば、厳しい評価を受けた人も、自分が活きる道を探しやすくなる。
これは是非今後、いろいろな企業に提案していきたいです。

そこまで考えて、でも、と思いました。
今週の週刊東洋経済に、指名解雇が現実のものとなりつつあるという記事がありました。
私自身がそういうことのお手伝いもしてきましたが、なるほど、増えているのか、と実感します。
となると、企業による雇用義務が有名無実化していく中で、「使えない人を使う役割を探す」なんてことを企業がわざわざ行う可能性は低いのじゃないか。
大企業で、3回までチャンスを与えます、という会社もありました。でも中小や中堅企業ではそんな余力はないかもしれません。

なら、そもそも、能力の高低によらず収益を生み出せる、ビジネスモデルもありうるんじゃないか。

高度成長期の日本で言えば、それは建設業だったように思います。
建設現場作業というのは、専門性がある人が中心になって、そうでない人も活用できるビジネスです。
介護事業が一時期、失業者の受け皿として期待されてきましたが、建設業に代わる受け皿にはなりえないだろうと予測しています。
それは、建設現場では高いコミュニケーションスキルを求められないのに対して、介護事業ではコミュニケーションスキルこそが重要になるからです。
一方で、多くの企業で「使えない人」と断じられた人は、その理由の一部にコミュニケーション不全があると感じています。
自分の意見をうまく伝えられない、ヒトの話を丁寧に聞くことができない、言われたことの順序を間違って解釈する、など。
コミュニケーション能力の低さが理由で失業した人に、コミュニケーション能力が求められる職種を用意しても、精神的な苦痛を強いるだけだと思うのです。

さらに、「使えない人」と言うのは一般的に転職が困難です。
私の本にも書きましたが、職務経歴書をうまく整理することで転職可能性を高めることはできます。
でも、もし「使えない」原因を解消していなければ、次の転職先からもすぐに離れなくいけなくなるかもしれません。
人の能力に過度に依存しないビジネス、というものが今後求められるのでしょう。
でもそんな無い物ねだりをしていても仕方ない。
となると、企業側でスキルアップのための教育の場をよりはっきりと設けなくてはいけない。

答と思ったものがさらに疑問を生み、さらにその答えを探し続ける。
マネジメントの改革とはそういうものです。
「使えない人」が「できる人」に変わるために、会社と個人とで何をすべきか、さらに考えていきたいと思います。

 

平康慶浩(ひらやすよしひろ)