あしたの人事の話をしよう

人事コンサルタント 平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

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組織におけるパレートの法則と、ドッジボール

セレクションアンドバリエーションの平康慶浩です。

パレートの法則は皆さんご存知かと思います。
この名称をご存じでなくても、80対20の法則、とかいえばご理解いただけるかと。
企業に適用した場合だと、売上の80%は20%の人材で実現されている、とか言われますよね。
自然界においても、アリの観察結果などから、パレートの法則にあてはまる事例が報告されています。
よく働くアリが20%、普通のアリが60%、あまり働かないアリが20%、など。

昨日、日経にこんな記事が載りました。
働かない「働きアリ」の正体は 常に1割が出遅れ

こんな本も以前出ていました。私も楽しく読みましたので、未読の方は是非。

 

働かないアリに意義がある (メディアファクトリー新書)

働かないアリに意義がある (メディアファクトリー新書)

 

 



これらは要は、生物が行動を始める基準に違いがあるということを示しています。
人で言えば、例えば台風が近づいてきているとします。
危機感が一番強いタイプの人は、台風発生前から備えをしている。
次に強いタイプは、台風発生時点から備える。
次に強いタイプは、台風が自分の住んでいるエリアに近づくとわかった時点で備える。
そうして順々に行動規準が遅くなり、最終的には、被害に会って初めて行動する、と言う人にまでたどりつきます。

これがさらに組織になると変わる。
自分自身が何度も台風被害にあっても改善しない人から、全くの他人の被害に心を痛めて行動を起こす人までわかれる。
そうして、他人の被害に心を痛める人たちによって台風についての研究が進んだり、あるいは防災計画が練られたりする。
これらも、組織が求める効率的な水準に適したように自然に調整される、とも考えられます。

さて私の専門は「人事と組織の観点から経営効率を高める」ことですから、「組織を構成する人たちの行動のしきい値が違う」ことを所与として、さらに続きを考えます。

20%のあまり働かない人がいることを、組織の安全弁と言う場合があります。
上記の本でもそのような意味から、働かないアリに意義がある、というタイトルになっているようです。
でも、企業組織ではそんな悠長なことは言っていられません。
それにそもそも、全体の20%はどうせ働かないから、と考えて人を採用する経営者も存在しません。

だから、「組織を構成する人たちの行動のしきい値が違う」事を所与としても、働かない20%をどう働かせることができるか、を考えます。

働かないことが楽でいい、と思う人がいるかもしれません。
しかし私の考えでは、20%のあまり働かない人というのは、のんびりしたお気楽型の人ではないと思うのです。

会議に呼ばれない。
プロジェクトメンバーに選ばれたことがない。
部下を持たされない。
指導を指示されない。
研修に参加する機会がない。

つまり「あまり働かない」のではなく、「組織の中で働く機会を与えられていない」人たちの可能性が高いと思うのです。
だから仕事ができないわけでもないけれど、チャンスがなくて能力や成果を発揮できない。
どんどん組織に埋没していく。
気が付けば、組織のお荷物になっている。

  なぜそうなってしまうのかを考えた時、私はそれは子どものドッジボールのようなものだと考えました。
  ボールを持った子ども、狙われた子どもがコートの中を動き回ります。
  でも、ボールを持つ機会も与えられず、狙われることもない子ども。
  ただボールから遠いところをうろうろしているだけでも、それでも頭数には入ります。
  勝負がつくまでには最後には狙われる。
  でも、子どものドッジボールには最後がありません。大体休み時間の終了とともに、途中で切り上げられる。
  だから、一緒にドッジボールに参加しているのに、一度もボールに触れずに教室に帰る子どももいます。
  そんな子供はやがてドッジボールに興味を示さなくなったり、仲間から外されてしまうかもしれません。

ひるがえって企業組織を見てみれば、それは大事な仕事を任されたことがない、ということになるのかもしれません。
となれば、等しく大事な仕事を与えることが解決策になります。

  ドッジボールとして言い換えれば、それはボールを増やすことだと思います。
  ボールを増やすとゲームの複雑度は増します。
  しかし、個人が活躍する機会は確実に増える。
  実際、そういうドッジボールもありますよね。先生が取り仕切る場合などに見られることが多いようです。

  一方で、複数のボールを使うドッジボールを嫌う子どもがいます。
  それは、ガキ大将のようなタイプです。
  ボールが増えると、全体のコントロールがとても難しくなる。それに、目立つ人が一人ではなくなる。
  自分が全体を把握しコントロールしたい、自分が主役になりたい。
  そういう子どもがいる場合には、複数のボールを使ったドッジボールは流行りません。
  だから先生が取り仕切る場合に、このタイプのゲームは多いわけです。

企業組織においても、ボールを増やすことはできます。
いつも同じ「優秀な人」に仕事を任せるのではなく、等しく多くの人に仕事を任せることです。
しかし、これは複数のボールを使ったドッジボールのような問題を生じさせます。
なぜなら「優秀な人」は、任せた仕事をどんどん勝手に進めていってくれる。
しかし、経験のない人はそうではありません。
となると、任せた仕事を完了させるためには、指示・依頼した側が教育しなければいけない。
これを面倒だ、と考える組織の場合には、組織の中のボールは増えません。

一方で、働かない20%を減らすためには、ボールを増やさなければいけません。
経験が人を育てます。
指導した/指導された経験が、さらに人を育てます。
「優秀な人」ではなく「できる人」を増やすことができます。
さらに、皆が企業組織を自分のこととして楽しめるようになります。

 ボールを増やせば、ゲームコントロールが難しくなる。
 でも、楽しみながら活躍できる人が確実に増える。

80対20の法則は経験則です。
経験則は観察の結果であり、観察対象に影響しようというものではありません。
私たちは、私たちを観察するものから自由になって、自分たちを変えることができます。
そうして、さらに進化することができると思うのです。



平康慶浩(ひらやすよしひろ)