あしたの人事の話をしよう

セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役 兼 グロービス経営大学院HRM担当准教授の平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

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介護ビジネスの将来

セレクションアンドバリエーションの平康慶浩です。
最近暴論を書いていなかったので、少々暴論を書きます

拙著、「うっかり一生年収300万円の会社に入ってしまった君へ」の中で、医療・介護系も収入に天井がある、コストとして扱われる職種である、と記しました。
その部分を読んで、ブログで取り上げていただいた方がいらっしゃいました。

こちらのブログです。
介護で地方を活性化させる社長のブログ!
ブログを拝見しましたが、とてもまじめに頑張っておられる方です。
応援させていただきます。

で、私の本の中にも書いたのですが、特に介護ビジネスは厚生労働省が経営者となって、各地の各事業者に業務委託しているだけのビジネスモデルだと理解しています。
おまけに、医療保険と同じ理屈で、保険で賄っているから利益が出ない。
あたりまえですよね。
可処分所得は決まっているのに、介護は保険なしで民間業者に依頼すれば月40万円~80万円はかかる。
それを、範囲をしぼってしぼって、保険適用範囲を狭めて、それでも間に合わない状態です。

さらに、過去にはコムスンの問題などありました。
私はグッドウィルの人事制度を設計した関係で、コムスンも多少は知っています。
ホールディングの経営者が一緒ですから、設計のロジックも一緒でした。
ビジネスとして利益を出すために、最大のコストである人件費を削りながら、ビジネスモデルを構築する。
それはもちろん、不正の温床となってしまいます。

介護ビジネスには不正が発生しやすい。
それは、現場の苦労に見合った給与が支払われていないからです。
さらに、実はこちらの方が問題なのですが、経営者が利益をとりづらいからです。
皆保険制度の世界では、利益率は極限まで下がるのです。
だから、不正をしてでも利益を確保しはじめます。
これを解消するためにはどうすればいいのか、と言うことを考えると、答えは一つだろう、と考えたのです。

それは、介護ビジネスの国営化です。
民間事業化で発生した経営層をすべて、中間管理職にしてしまう。
不要な経営者は排除する、ということです。

しかし、多くの方は、国営ビジネスを是としません。
それは、国営ビジネスには監視者がいないため、非効率が生じるからです。

監視者がいなくても、非効率にならない仕組み。
それがセットで必要です。
その答えがあります。

職務給に基づくキャリアパスの構築です。

国営ビジネスにおける従業員は、公務員か公務員相当の身分保障を受けます。
日本ではなぜか、公務員の身分保障とは終身雇用で年功昇給、です。
それをやめる。
職務給として、同じ仕事をしている限り、昇給はしない仕組みにする。
終身雇用も保証しない。成績が悪ければ解雇する。
その代り、給与水準を高くできます。

さらにこのようなことを国単位で実施できたときに、確実に削減できるコストがあります。
それは、各経営母体の利益です。
民間業者に任せることで、それぞれの業者が利益を得ることになります。
もちろん経営者自身がサービスの提供者として体を張っておられる方々がいます。
現在民間事業者として頑張っておられる介護事業経営者の方々にとっても、国営ビジネス化は大きなメリットとなります。
それは、マネジャーとしての給与を支払えるからです。マネジャーは、高いレベルの職務なので、高い給与を支払うことができます。

そうして、無駄なコストを削減することができます。
現場を見てみればわかりますが、介護施設の経営者で、実際に何もしていない方がいます。
例えば母体の医療法人の経営者のご子息で、名目的な経営者になっておられる方。
もう引退された医師で、名目的に理事長だけれども、診療行為は行っておられない方。
あるいは、上部団体から天下ってこられた方で、週に一度も出勤されない方。
介護施設の損益計算書を見て、経営層人件費の多さにびっくりしたことがあります。

こういった、売上に貢献しない人々の給与が大きなコストとなっています。
これを削減するには、国営化しかないと思うのです。
そうして、介護についてのキャリアパスを全国で統一し、公的試験により昇進昇格基準を明確にする。
さらに、資格制度についても現場の実績をもとに更新性とする。
サービス受益者に対しては、別窓口からの満足度調査を行う。
満足度が低い介護職員は、再教育の場を設けはするが、それでも難しければ解雇する。
決して、終身雇用は保証しない。

これから高齢化がさらに進む日本で、外国からの介護就労移民を許容しないのであれば、次の三つが必要だという意見です。
①介護ビジネスの国営化
②介護ビジネスに係る職員の公務員化
③介護公務員に対して、年功昇給と終身雇用は適用しない

……暴論なんでしょうね。
でも、こうすればうまくいくと思うんですが。


 

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平康慶浩(ひらやすよしひろ)