あしたの人事の話をしよう

セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役 兼 グロービス経営大学院HRM担当准教授の平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

まじめな話と、雑感(よしなしごと)とがまじっているので、 カテゴリー別に読んでいただいた方が良いかもしれません。 検索エンジンから来られた方で、目当ての記事が見当たらない場合 左下の検索窓をご活用ください。

傑出するために、欠落を許容しよう

自己啓発3部作(今名づけました)の最後として、ちょっと書いてみます。
今回の記事は、ちゃんと成長できている人向けのものです。

ちなみに前2作は以下をご覧ください。

 

「ありがとう」より「うれしい」と言おう - あしたの人事の話をしよう

 

できる人になりたいなら、主張よりも質問を覚えよう - あしたの人事の話をしよう



あなた自身が成長を続けていくと、いつしか壁にぶつかります。
壁にはいろいろありますが、中でも大きな壁のひとつに「認められ続けたい」というものがあります。

これはとても矛盾している感情です。
他人に説明しても、同じ壁にあたったことのある人にしか、わかってもらえません。

なぜなら、この壁に突き当たった人は、すでに多くの人に認められている自分を知っているからです

そして、自分がなぜ多くの人に認められているかを知っている。

でも、この壁を越えなければ「もっと認められる」ステージに行くことができません

もっと認められるためには、二つの恐怖を乗り越えなくてはいけません。
認められ続けたい、という壁は、二つの恐怖の壁でもあります。

第一の恐怖は、今あなたを認めている人たちから認められなくなる恐怖です。
「変わってしまったね」
恐怖は、なにげないその一言に集約されます。

第二の恐怖は、新しく出会う人々に認められない恐怖です。
「たいしたことないよね」
そんな一言を言われた瞬間に縮み上がるかもしれません。

この壁を乗り越えようとするとき、多くの人は「もっと優秀になろう」とします。
そうすれば、第一の恐怖に出会うことはなくなります。
そして第二の恐怖に対しても、自信をもって接することができます。

……はたしてそうでしょうか?

あなたが考える「もっと優秀」とはどういう状態でしょうか?
友達が1000人いるのなら、それが1万人になる状態?
会社で一番であるのなら、同業で一番の状態?日本で一番の状態?

はるか高みを目指すことはとても重要です。

しかし、それは日々持つべき志向であって、目の前の壁を乗り越えるきっかけにはなりません。

二つの恐怖に基づく、認められ続けたい、と言う壁を乗り越えるためには、ただ一つの方法しかありません。

それは、自分に足りないコトをはっきりと自覚すること。
そして、その欠落の正反対にある長所を極端に伸ばすことです。
つまり、長所を伸ばして、短所をさらに悪化させる、ということです。

あなたの長所がスピーチのうまさにあって、短所が事務仕事ができないことだとします。
なら、スピーチ「しか」できない人を目指す。
そして事務仕事をやめるためにそもそもパソコンを捨てる。

あなたの長所がプログラミングスキルで、短所が新しい出会いでのコミュニケ―ションだとすれば。
ひきこもりになるくらい、プログラミングに特化する。仲のいい人たちだけと付き合う。

それが目の前の壁を超える答えになります。
そうしてあなたは、もっと認められる人に成長することになります。


ふりかえって、あなたの周りで本当に多くの人に深く認められている人を思い出してください。
その誰しもが完璧超人ではありません。
むしろ、極端に欠落している人の方が多い。


もしあなたが欠落を埋めようと行動し始めると、人はあなたをこう言います。

「丸くなったね」

それは、認められ続けるための行動です。
おだやかな、安定のための道が待っています。


しかしもし成長し続けたいのなら、安定に背を向けましょう。


 

平康慶浩(ひらやすよしひろ)