旧き良き役員は不要になる
長らくの間,役員とはキャリアのゴールだった。
長い会社員生活のなかで培った社内外の人間関係をもとに,社内や取引先との調整を円滑に進める立場。
そうして役員退任後は理事になったりもした。
しかし今や多くの企業からそんな役員が消えていっている。
もしあなたの会社にまだそんな役員がいたとしても,あと5 年ともたないだろう。
理由は2 つある。
第1 に,社内調整における人間関係の重要性が低くなっている。
例えば管理職以上のポストで年功序列はすでに過去の遺物となっている。
その結果として,先輩と後輩の関係性はすでに役に立たない。
10年前の部下が来年上司になることだってある。
第2 に,外部取引先との関係においても,人間関係の要素が薄れている。
価格情報や取引情報は広く公開されるようになり,取引先そのものの入れ替えも効くようになっている。
また,人間関係に基づく取引はコンプライアンスに抵触する可能性もある。
要は時代遅れの役員では役に立たないということだ。
村の長老のような役員では,移り変わる競争環境に対応できなくなる。
役員の役割は,今は移行の過渡期にある。
消えつつあるとはいえ,中小企業や老舗企業を中心に長老型の役員はまだ存在している。
一方,グローバルで戦う企業や,先進企業では新しい役割を担う役員たちが生まれている。
それらが混在しているのが現在だ。
“ウチの会社ではまだ長老型の時代が続く”と思うかもしれない。
会社が完全に国内生産で国内消費のビジネスを展開しているのならば,その可能性はある。
しかしそうでないとすれば変わらざるをえない。そして人事からは,新しい役員の役割を提示していくことが必要だ。
新しい役員の役割とは,他社と戦える,ビジネス最前線での指揮官だ。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)
セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役
※当ブログ記事は、平康慶浩が月刊人事マネジメントで2013年9月~2014年2月にかけて連載していた「経営ブレインへの転換を図る5つの人事機能」から転載しています。