【4-3】経営者が知りたい「優秀さ」とは
■ 知りたいのは「成長する人材」
前回記事に記載したように新人だけを可視化しても,対象人数はわずかだ。
社歴の長い会社であれば在籍している従業員は,60歳定年としても38年次にわたる。65才定年であれば、43年次だ。
とすれば新人は全体の3 %以下にすぎない。
さらに、優れた経営者であれば,その3 %の新人を常に意識している。人事部にわざわざ聞くほどもない、と判断されることもあるだろう。
しかし,優れた経営者でも意識しきれていない従業員がいる。
そして,彼らこそが可視化すべき人財なのだ。
それは「成長している従業員」だ。
「伸びているのは彼・彼女です!」その事実が知りたいのだ。
誰が伸びているのか。それを知るために,人事部門はどうすればよいのだろう。
人事部門のあなたは,誰が成長しているか知っているだろうか。
「もちろん知っている」と答えられるあなたは素晴らしい。
でも残念ながら,知らない人が大半だ。
そもそも成長とは何か?
社風を熟知すること?
社内に慣れ親しむこと?
一人できっちりとした仕事ができるようになること?
残念ながら現場ではそのような解釈が多い。
だから人事部門だけが「本当の成長」を判断できるチャンスを持っている。
経営層が知りたい従業員の成長とは何かをもう一度考えてみよう。
新人であれば仕事に慣れ親しんだり,スキルを獲得することだろう。
でもそんなことはわざわざ経営層が知りたいことではない。
経営層が知りたい従業員の成長とは,「変化」だ。
ワーカーがマネジャーに変わる。
フォロワーがリーダーに変わる。
そんな変化が会社を成長させる。
以下,その変化を知る方法を紹介しよう。
■ 変化にはきっかけがある
最初に知るべき変化は,そのきっかけだ。
分かりやすいきっかけに「大成功」がある。
誰かが大成功した場合、人事がその人のイベントを記録し残しておこう。
あるチームが大型受注に成功したとすれば,それに携わったメンバーを一番下のスタッフまで記録しておく。
たとえコピー取りしかしていなかったとしても,勝利したチームに所属していたメンバーは必ずきっかけを得ている。
逆に「大失敗」も記録しておくべきだ。失敗もまた変化のきっかけになる。
きっかけが変化につながるためには,連続することが必要だ。
ある打者がホームランを打ち,次の打席でもまたホームランとなれば,彼は「ホームランバッター」として名前が知られるようになる。
もちろん間に三振があってもいい。
ただ,“あるタイミングから彼はよくホームランを打つようになった”という事実に気づくことが重要だ。
まず,きっかけを人事部門として入手する。
次に,それに関与したメンバーをフォローしていけば,「誰が変化できているか」について,候補者が把握できるようになる。
あとは実際に変化した人材の名前をピックアップし,詳細な追跡調査をしたうえで,経営層に提示すればよい。
「我が社で成長している人材は彼・彼女です!」
作業には半年から1 年のフォローが必要になる。けれども,経営者には必ず驚きとともに喜ばれるだろう。
■ つなぐことが人事の本質
どんな要件を可視化すべきかを定める。
そしてその証跡をどのように入手するかを決め、実行する。
システム化よりもまずすべきことは、この二つの作業を行うことだ。
そのためには、データや、人の個性を見るのではなく、誰が何をしているのか、何をしたのか、と言う仕事(責任と結果)を見ることが必要だ。
これらはまた人事の仕事の本質でもある。
人事の仕事とは,人と人,人と仕事とをつなぐものだからだ。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)
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※当ブログ記事は、平康慶浩が月刊人事マネジメントで2013年9月~2014年2月にかけて連載していた「経営ブレインへの転換を図る5つの人事機能」をもとに加筆修正したものです。
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