ジョブ型になるとワンチームであることの重要度が高まる
会社の人事の仕組みのお話です。
コロナによるリモートワークで、人事制度・運用の界隈ではあらためて「ジョブ型の仕組みが必要だ!」的な論調が強くなりつつあります。
もちろん「メンバーシップ型にも良い点はたくさんある!」ということも事実です。
受講生の一人が中国の方なんですが、中国ではジョブ型が基本だと。けれども、今や大企業となった多くの会社の創業メンバーたちはメンバーシップ型だと。
なるほど、ジョブ型のはずの組織の経営層がメンバーシップ型というのはとても興味深い。
で、そのあたりで私自身も混乱してきまして、ジョブ型とメンバーシップ型って対義語になるんだっけ、と。
多分違うんですよね。
結局のところメンバーシップ型というのは日本固有の仕組みについての説明でしかないわけです。
「新卒一括採用年功序列終身雇用+会社都合転勤サービス残業アリアリ奥さんは専業主婦でお願い」みたいなことの言い換えなわけですよ。
それに対して世界標準をジョブ型と言っていわけですが、じゃあ諸外国の企業の創業者メンバーたちが今も残って頑張っていることをメンバーシップ型もあるよね、と言っていいのかと言えばそうではないと思ったのです。
だって、企業創業メンバーたちが年功で給与が増えていくわけでもないですし。
それはメンバーシップ型ではなく、最近はやった言葉でいえば、ワンチームになることであり、たとえばビジョンやミッションに基づいて同じ方向を向いている状態なわけです。
つまりジョブ型だとかの定義と関係なく、組織には「一体感」が必要だ、ということなんですよね。
みんなで一緒のゴールに向かってそれぞれの強みを生かしながら頑張っていく。
それが一体感であって、むしろジョブ型の方にそれがあると思うのです。
たとえばメンバーシップ型で終身雇用で年功序列だから、社内政治ばかりやって同じ方向を向いていない人たちの集団、なんていくらでもみかけられます。
そもそもメンバーシップ型は、終身雇用と年功処遇を補償することで生活を安定させ、安心して働くことができるようにした仕組みでした。
それによって社内の一体感を高めようとしたのです。
みんなが貧しくて、社会が成長している状態ならそれでもよかったのでしょう。
けれども社会全体が裕福になった今、求められる安定の内容が変わってきています。
より高いレベルの安定が求められるとともに、一体感は一時的なものになる場合も見えます。
生活すべてをささげた一体感、というものは、起業直後などのごく一部の組織ステージをのぞけば望むべくもありません。
だとすると、むしろ今まで以上に、一体感醸成のための取り組みが必要になります。
それはエンゲージメント向上と、成果責任を明確にするジョブ型組織によって実現しますが、それらをつなぐものが、人事制度に他なりません。
5月末のHRカンファレンスや、6月以降のセミナー等で、それらの情報を順次発信していきます。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)