あしたの人事の話をしよう

セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役 兼 グロービス経営大学院HRM担当准教授の平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

まじめな話と、雑感(よしなしごと)とがまじっているので、 カテゴリー別に読んでいただいた方が良いかもしれません。 検索エンジンから来られた方で、目当ての記事が見当たらない場合 左下の検索窓をご活用ください。

自由になるための時間のまとめ方

f:id:hirayasuy:20141213175534g:plain

僕たちは、すきま時間のような、細切れの時間をうまく使おうとする。

それはたしかに大事なことで、うまく使いこなせれば有意義だし、生産性もあがる。

スマホ電子書籍はすきま時間の活用に最適だ。

 

でもすきま時間が生み出す価値は、まとまった時間よりも小さくなりやすい。

例えば先日こんな記事を書いた。

 

すきま時間はもともと、無価値、だと考えられている。

だからそれが少しでも価値を生むようになるのなら、ゼロよりはずいぶんましだ、ということになる。

しかし考えてみよう。

 

①たくさんのすきま時間

 10分ごとのすきま時間 × 10回 = 100分

 

:この間にできることは、メールのチェック、SNSの確認や書き込み、ゲーム、電子書籍の読書、ちょっとした電話、などだろう。

 

②まとまった時間

 まとまった50分 × 2回 =100分

 

:50分単位になると、ちょっとした資料作成、専門書の要点確認、長いメールの返信、ブログ記事の更新などができるようになる。

 

合計時間は同じ100分だけれど、②の方が価値が高いことができるだろう。

 

さらに

③もっとまとまった時間

 まとまった時間100分 × 1回 =100分

 

:100分(1時間40分)がまとまると、もう少し価値があることができるようになる。

そして、価値を生むだけではなく、もっと別の事ができるようになる。

10分でできなくて、50分でも中途半端で、100分になってできることのひとつは「自由になれる」ということだ。

言い換えると、「何もしない」という選択ができるということでもある。

ぼーっとしてみて、今懸案の課題に思いを巡らせることができる。

あるいはこれからの漠然とした夢や将来について考えることができる。

10分間なにもしなかったから、といって、思考は深まりにくい。

しかし50分間なにもしなければ、連想が連想を呼ぶようになる。

100分間になると、(そして寝入ってしまわなければ)、頭と心の中から何かがうまれるだろう。

 

時間をまとめると、考えることができるようになる

 

すきま時間は使うものだ。気晴らしや気分転換、つながりの維持などに使える。

それは消費に似ている。

 

まとまった時間は、消費ではなく、投資に使うことができる。

今目の前の結果は何も生まなくても、半年後や一年後のために、自分の中に何かを蓄積することができる。

 

じゃあどうすれば時間をまとめやすくなるだろうか。

僕なりの方法を紹介してみたい。

 

 

■ 時間のまとめ方:初級編

初級編は今日からでもすぐできる。ただ、簡単にできるだけに、失うものもある。だからいずれもあまり、お勧めはできない。 

 

① 寝る時間を遅らせる/減らす

  一番簡単にできることが、就寝時間を遅らせる、あるいは減らすということだ。

 ただもちろん、これはあまりお勧めできるものではない。僕自身も20代の頃はともかく、最近はなるべく使わないようにしている。

 就寝時間を遅らせるということは体のバランスを崩しやすくするし、減らすと体力を消耗する。

 

 

② 食事の時間を短縮する

 朝食はなるべくとろう。減らすのは昼食か夕食の時間だ。

 昼食を誰かととるために会社に行っている、という人もいるだろう。

 でも昼食を10分で終わらせられれば、あとの50分間(会社によっては35分間)は自由に使える。それほど長い時間ではないけれど、確実に時間をつくることはできる。

 ただ、社内のつながりを昼食で維持しているのであれば、それが希薄になってしまうのはなかなか辛く感じるだろう。

 

 

■ 時間のまとめ方:中級編

中級編は、何かを失うというわけではない。ただ、生活の改善が必要になるので、人によってはとても難しい。

 

③ 朝起きる時間を早める

 僕の友人・知人の多くがこの選択肢をとっている。

 「できる人」は朝、仕事をする、という話もある。

 朝のまとまった時間は、クリエイティビティを高めるともいうし、なにより昼前までに一仕事終わらせられるというのはとても素晴らしい。

 ただ、夜型が長い人だと、朝型に変えるのにはずいぶんと精神力を使うだろう。

 

 

④ 通勤手段/時間を変える

 まとまった時間の使い道を「考える」ことに使う場合に選択できる手段だ。なんといっても、朝夕のラッシュは、すきま時間としてすら使うことが難しい。 

 すきま時間にすらならない通勤時間をまとめるために、例えば「歩く時間を増やす」というものがある。目的地が定まっている場合、歩くことは習慣的にできる。その間、考えをめぐらせることができる。

 例えば僕は自宅からオフィスまで歩くことが多いのだけれど、さまざまな考えがとめどなくあふれてくることもある。そんなときはスマホ音声認識機能で、かたっぱしからメモに変えていく。メモは自動的に僕のメールアドレスに転送されるので、多少意味不明な変換になっていたとしても、整理するときに修正ができる。

 資金的に余裕があるのなら、電車の代わりにタクシーを使う日を作る、ということも有効だ。

 

 

■ 時間のまとめ方:上級編

 上級編は、そもそも計画的にそうしておかないとなかなか難しい。そして、少々お金もかかる。ただし効果は抜群だ。

 

⑤ 職住接近を徹底する(要は会社のそばに引っ越す)

 今すでに会社よりも遠方に住んでいる人には難しいだろう。ただ、もし転勤した際や、引っ越さざるを得ない場合に常に意識しておくと、比較的たやすく実現できる。

 つまり、通勤時間を極力減らす、ということだ。

 通勤時間が減ると、朝も夜もまとまった時間ができやすくなる。逆に、通勤時間ほど意味がない時間もない。

 結婚していて子供がいたりすると、自分だけの都合では難しいだろう。だから、意識しておく、というレベルで構わない。とにかく「通勤時間を減らす」ことができれば効果は同じだ。

 

⑥ 自分出張をする

 僕が一番おすすめしたいのはこれだ。ただしお金はかかる。といっても、1泊1万円以内で納めることはできるだろうけれど。

 要は、たまにでいいから、近所のホテルに一人で泊まることだ。会社のそばが一番効率的だけれど、別に家の近所だっていい。気分転換のために、見知らぬ土地を選ぶのも一興だ。

 たとえば和光に住んでいて、職場が飯田橋だとしよう。だったら神保町あたりに泊まると面白い。

 丸の内や大手町だったら、銀座で泊まってみたらどうだろう。新宿だったら中野あたりをお勧めしたい。

 そうして、自分のためだけに時間を使う。

 僕はこの方法を、本の執筆のときに使う。なぜなら、本を書くということは、すきま時間では不可能だからだ。少なくとも10時間とか20時間のまとまった時間がないと、本は書けない。

 うだうだとして、書いては消して、ちょっと寄り道をし、それから閃いて没頭して気づけばたくさんの時間がすぎている。そんな行動を気兼ねなくできる状態にしなければ本を書けない、というのは僕がわがままだからかもしれないけれど。

 

 

 

すきま時間をうまく使いこなすことは、賢いことだ。

まとまった時間をとれているということは、賢いこと、というよりは、自由であるということだ。

賢い生き方より、自由な生き方の方が、僕はいいと思う。

 

 

平康慶浩(ひらやすよしひろ) 

 

時計の画像:Copyright (C) Tomo.Yun 1994-2011