あしたの人事の話をしよう

セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役 兼 グロービス経営大学院HRM担当准教授の平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

まじめな話と、雑感(よしなしごと)とがまじっているので、 カテゴリー別に読んでいただいた方が良いかもしれません。 検索エンジンから来られた方で、目当ての記事が見当たらない場合 左下の検索窓をご活用ください。

上司を飲みに誘って、同僚や部下とは会議をしよう

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先日のセミナー登壇時に話したことを書いてみる。

 

その日のセミナー終了後のアンケートは、いつものように高い点数をいただけたのだけれど、さらにフリーコメント欄に「感動しました!」「10年前に聞けていればもっと良かった」などの意見をいただけた。

毎年3回定期的に登壇するそのセミナーで僕は、管理職がどうすればもっと活躍できるようになるのか、という問いかけに対して答えている。その合間に小ネタを挟むのだけれど、その日は、管理職になったら2つの事をしましょう、という話をした。

単純で誰にでもできるけれど、案外やっていない管理職が多いことだ。

 

1.管理職になったら会議を開こう

会議、というと無駄なものというイメージが強い。

でも本来の会議にはもちろんメリットが多い。

まず第一に、あらたまった場としての雰囲気を作り出せることだ。隣の机で働いている人と会議をする必要はない、と思うかもしれないが、集中して議論をするためには「あらたまる」ことはとても重要だ。

また、伝達事項や指示事項を伝えるにも「あらたまる」ことは必要だ。

僕自身も大企業で働いていたときには、後ろの席の部下の方へ椅子をまわして「これとこれやっといてね」という指示をしたりした。

でもそういう指示に限って後回しにされたり、忘れられたりする。

気楽な依頼ならそれでもいいのだけれど、プロジェクトのタスク割り振りとか、クライアント課題の深堀のためのディスカッションは別の場の方がよい。

 

会議を開くことの意味はもう一つある。

それは、相手を従わせることを実感することだ。

なり立て管理職は人事権を持つわけでもないし、評価制度を使って部下のやる気を高めることもまだまだ難しい。傾聴などのコーチングスキルを使いこなせる人も少ないだろう。

また、部下からすれば先輩が管理職になったところで、気安さはそのまま維持されて、上司としての接し方がわかりづらい。

相手を従わせるということは、上下関係をはっきりさせるということでもある。

しかしプライベートで仲のいい同僚や部下と上下関係をはっきりさせることはむずかしい。そんな時、会議を開くことは上下関係を示すことに役立つ。

会議を開くと時間をとられる。そこに参加しなければいけない。それを、管理職の指示によって行うことに大きな意味があるのだ。

 

ただし、いわゆる「無駄な会議」にならないように議題をしっかりとさだめ、始まりと終わりの時間を定めなければいけない。もし早めに議論が終わったらさっさと切り上げることも重要だ。

 

 

2.管理職になったら上司を飲みに誘おう

あなたがお酒好きだったらちょうどいい。管理職になった時点で、上司に声をかけて飲みに行こう。「おごってください」でもいいし「僕が昇進したのは〇〇さんのおかげなんで、おごらせてください」でもいい。

あなたがお酒嫌いなら、ランチでも構わない。「近所にコスパが良くて居心地がいい店見つけたんです。ご一緒しませんか?」と声をかければいい。

なぜ上司を誘うべきかといえば、上司の直近での考え方やモノの見方がわかるからだ。雑談の中で、最近の時事ネタに対する意見も聞けるだろう。そうしてあなたは上司の視点を持てるようになる。

重要なことはそれだけじゃない。

上司の側からすればあなたは、自分に親しみを感じている人、として映るようになる。

昨今、部下を飲みに誘うことはモラハラ・パワハラアルハラなどなどいろいろなマイナスの言葉で飾られる。しかし40代以上の管理職であれば部下とのコミュニケーションを求めている人は多い。そんなニーズにこちらから応えることで、「わかっているやつ」となり、そしてさらに大事なこととして「こちら側のやつ」になっていく。

もちろん「こちら側」とは経営に近しい側という意味だ。

 

 

3.僕も残念な管理職だった

でも残念なことに、多くのなり立て管理職は、上司と会議をして、部下と飲みに行ってしまう。

それはまったく逆効果なのだ。

実際、まだ30才前後で管理職になった僕自身もそういうことをやっていた。

上司には格好をつけたいので、「今度の案件についてちょっとお時間いただけますか?」と声をかけ、あらたまったミーティングを行う。

そしてその夜には部下や同僚を連れて飲みに行く。

正直、ずいぶんと残念なことをしていたと思う。

 

僕の場合めぐまれていたのは、上司や部下たちがそれぞれしっかりしている人だったことだ。

だからデキる部下から飲みに誘われることもあったし、デキる上司が主催する会議にも頻繁に出席して議論した。そうして、どうも自分がやっていることが真逆だということに気付いたのだ。

 

格好をつけたい

 

という思いがその根底にあったように思う。

上司を飲みに誘うのは媚びるようだし、部下を会議に集めるのは権力に酔っているようだ。だからそんなのは格好悪い。

格好をつけるには、そんな格好悪いことはしないことだと考えていた。

デキるプロフェッショナルとして、上司にもどんどん意見をする。

部下とはプライベートで仲良くなって、チームの一体感を高める。

そうすれば自分の価値はさらに高まると考えていたのだ。

それが真逆の事だと気付くには数年かかった。

 

僕はその分だけ回り道をしたけれど、この文を読んでくれたあなたには回り道をしてほしくないと思う。

 

 

 

平康慶浩(ひらやすよしひろ)

 

※ちなみにそんな僕の話が聞けるセミナーは、今の予定では以下のものがある。

テーマに興味があればぜひ登録してみてほしい。

 

2015年6月16日

人事評価・報酬制度の基本【午後】

SMBCコンサルティング(三井住友銀行グループ)