【人件費の近未来1-2】 ベースアップを取り巻く要因
(当記事は、月刊人事マネジメント2014年3月号から1年にわたって連載した記事を、2015年の現状にあわせて加筆修正したものです。)
前回記事はこちら。
ベースアップは行うべきなのか。
消費税10%への再引き上げは延期されたが、5%から8%への引き上げ影響は意外なほどに大きかった。
2014年のベースアップ平均は約2%だったが(連合発表)、物価はそれよりもあがってしまった。だから2015年にも労組はベースアップを要求している。その割合は、2014年同様に2%前後だ。
では企業側人事部としてはどう考えるべきだろう。
ここで基本に立ち返って、ベースアップを取り巻く基本要因を理解してみよう。
前回示した4つの視点のうち、社会と個人の視点から見た人件費の性質は、ベースアップを是認させようとする。
消費税増税という景気マイナス要因に対して、少なくとも景気を維持するための方策が必要だということは誰でもわかる。
また、個人の生活費負担が増えるということもわかる。
つまり、国も労組もベースアップを要求する。
しかし企業の視点から見れば、コスト増大要因としての懸念が強い。
ベースアップが人財に対する投資になるか、といえばそうともいえない。
それでもベースアップは行うべきなのか、否か。
企業の視点から見ればマイナス要因でしかないベースアップだが、ある視点で見た場合、プラスに転ずる。
それが市場の視点だ。
端的にいえば、「競合他社がベアを実施する」のに「自社がベアを実施しない」となれば、労働市場から人財を採用する力が低下する可能性がある。
ベースアップの有無は、絶対額の低い初任給で顕著に差が出る。
故にベースアップしない場合の影響は、新卒採用にもっとも強く出る。
もしあなたの会社で継続的に優秀な新卒人財を採用し続けたいのであれば、今回のベアに対応する必要がある。
(次回へ)
平康慶浩(ひらやすよしひろ)
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