あしたの人事の話をしよう

セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役 兼 グロービス経営大学院HRM担当准教授の平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

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関係がアツいと組織も免疫が効いてくる

免疫系システムで組織を説明されたとき、なるほど、と実感した。

親しくさせていただいているある組織のリーダーが、社内でマネジャーを集めて話された言葉だ。

簡単に引用してみよう。

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ウィルスのような外部からの攻撃に対し、人が免疫システムを機能させるため
には、体温を高めた方が良いと言われます。

人間関係も同じかもしれません。

健康な組織経営を心掛けるには、組織内の人間関係を冷やしてはいけません。

皆さんは、温かみある組織作りを心がけてください。

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では「温かみのある組織」とはなんだろう。

僕は組織の温かみは3つの要素に分類できると考えている。

 

第一の要素は、マネジメントルールだ。

マネジャーがマネジメントルールとして実践できる組織の温かみとはおそらく次のようなものになる。

 

・上司から部下への声掛け頻度を増やす

・部員同士のコミュニケーション頻度を増やせるようにする

・報告連絡相談を素早くさせる

・メールへの返信を素早くさせる

などなど

 

要は、コミュニケーションの数と質を高めるようにすることが、組織の温かみを高める前提になる。

 

 

第二の要素は、ハザードコントロールだ。

ビジネス上の思わぬ障害になりそうな要因に対して、ちゃんとした手を打てているかどうかがその内容になる。例を挙げてみよう。

 

・精神的に落ち込んでいる人に思いやりを持って接しているか

・ミスを隠そうとする人の不安を払しょくできているか

・仕事ぶりに差がある場合に、それらを解消するための、思いやりある指導ができているか

などなど

 

「情けは人のためならず」と言うことわざは、ビジネス社会でもまたあてはまる。

 

 

そして第三の要素は、全員がお互いに連絡を取り合える関係をつくることだ。

難しく言えば、組織のネットワーク閉鎖性を高める、ということになる。

ネットワークが閉鎖的でない(開かれている)、というのは、言葉的によくわからない可能性があるけれど、それはつまりこういうことだ。

 

【部内ネットワークが閉鎖的でない場合】

・多くの部員はそれぞれお気に入りとだけ話している

・上司としか話さない部員がいる

・上司と話さない部員がいる

 この状態の組織では、誰が何をしているかがよくわかっていない。だから問題が起きても他人事になったりするし、誰かの成功を喜ぶこともない。

 

ネットワーク閉鎖性が高まっているというのは、以下のような場合だ。

 

【部内ネットワークが閉鎖的な場合】

・誰が今何の仕事をしているか、すべての部員が知っている

・部員は部の誰にでも気軽に声をかける

・すべての部員は一日のうち、必ず複数の部員とコミュニケーションを取っている

・一週間のうち、上司と話さないまますごす部員が存在しない

 

「閉鎖的」というと悪いことのように感じられるけれど、ちゃんとチームとして成立していることが、ネットワークが閉鎖的だ、と言う風にとらえてみてほしい。

 

 

この三つの要素が整備された組織は、決して冷めることはない。

そしてその要素を整備することが、マネジメントの役割に他ならない。

 

 

平康慶浩(ひらやすよしひろ)