リーダーになるにはリーダーシップよりも重要なことがある
経営大学院で組織設計と人事マネジメントの基礎を教えている。
そんな中で、こんな意見を持つ受講生がいる。
「私は人事部門じゃないので、組織設計と人事マネジメントについては学問として興味はありますが、実際に使う機会がありません」
なら、人に関することでは、何に興味があるの?と尋ねると、決まって帰ってくることばがある。
「リーダーシップですね」
なるほどなるほど。
たしかにリーダーシップは重要だ。
昨今では、ピア・リーダーシップというように、どの階層、どの役割からもリーダーシップを発揮すべきだという主張が主流だ。
リーダーシップが重要だ、という意見に対して、私は決して反対しない。
けれども、経営学の古典にたちもどるなら、そしてもし、人事部門ではないけれども、経営のトップ層にまで出世する気があるのなら、やはり人事マネジメントは重要なのだ。
たとえば、こういう調査がある。
マネジャーを3階層の役割に区分して、4つの職務機能にどれくらいの時間をつかったかというものだ。
この調査からわかることは、「直接誰かにアプローチする」という意味でのリーダーシップ発揮時間は、役割階層を上がるにつれて減っていく、ということだ。
その代り、計画策定と組織化のための時間が増えていくのだ。
役割の階層を駆けあがるにつれ、導くべき人の数は飛躍的に増えていく。
しかし、人が一時にコミュニケートできる人数には限りがある。
だからこそ、直接ではなく、間接的に人をリードすることが必須となる。
そのために、組織の仕組みを熟知し、人を動かすモチベーションとそのための仕組みを理解し、目の前の課題解決と成長のための最適な状況を構築しなければならない。
組織設計と人事マネジメントは、まさにそのための知識と経験を網羅した学問なのだ。
まあ、それも含めて広義のリーダーシップだと言ってしまえばそれまでかもしれないけれど。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)