子会社が自立するための人事の仕組み
今日は会社の成長を実現するための人事改革のお話です。
子会社の人事制度を設計する際には、注意すべき前提がある、ということは常々理解していました。
これまでも外資系製薬会社の子会社とか、大手商社の子会社とか、ゼネコンの子会社とか、銀行の子会社とか、飲食チェーンの子会社とか、監査法人の子会社とか、さまざまな子会社の人事制度設計に携わってきたからです。
注意すべき前提は、はっきり言ってしまえば以下の点です。
・一定役職以上は親会社出身者で占められる。
・親会社よりも低い給与水準にしなければいけない。
・毎年の賞与原資は親会社に決められる。
あとは、親会社から来た社長に理解できる制度にしないといけない、といった点でしょうか。
親会社から社長で来るような人には転職経験のない人が多く、どうしても自社の制度が世界のすべてになりがちだからです。
たとえばコテコテ職能型の親会社から来た社長に対して、職務等級の人事制度を伝えてもすぐには理解してもらえません。
とはいえ独自性を出せないというわけではありません。
要はポストと報酬以外のところについて、しっかりとしたロジックを整理して必要性を示せば、納得してもらえることが多いからです。
そして最近気づいたのは、ある要素を新人事制度に組み入れれば、時として親会社を超える成長率と利益額を実現できる場合があるということです。
といってもそれは決して目新しいものではありません。
「子会社独自の成長戦略」を組み入れるのです。
そもそも子会社の人事制度設計における検討軸は、たいてい「生産性」「業務改善」などです。
その先には、利益率の向上や株主利益の引き上げが常に目標として掲げられます。
もちろん成長戦略も語られはするのですが、子会社独自の成長戦略の例はあまりみません。
むしろ親会社を含めたグループ全体の中での成長戦略の一部に紐付けられることが多いように思います。
実は私もそのことについてあまり疑問を持っていませんでした。
子会社としてグループ全体最適に貢献することは当たり前だろう、と思っていたからです。
しかし2つの人事的視点から、それだけでは行き詰る&息詰まることが多いことに、ようやく気付いたのです。
第一の詰まりは、成長戦略に貢献する方法がわからなくなる点です。
生産性や利益率を軸において人事制度を作り運用するということは、一人一人の社員に、決められた仕事の品質を維持しながらスピードを重視して行動してもらうことでもあります。
そのような業務をあたりまえに進めていると、人はどうなるでしょう。
目の前のことをよくするための知恵は使うのですが、それを疑う気持ちがどんどんなくなっていくのです。
それは全体が伸びているときには良いのですが、そうでなくなったとき、居場所すらなくしてしまうことがあります。
第二の詰まりは、給与が増えなくなる/増えても毎年わずかだけになる点です。
人件費枠が決められ、生産性が重視される会社では、給与の仕組みは、完全なところてん型の年功昇給か、ポスト配置を重視した職務型のいずれかに収れんします。
そして社員は誰も将来に対して前向きにならず、今の安心を重視し始めます。
そうして誰もが前向きな発言ができない、息詰まる社風が形成されてゆきます。
しかし子会社独自の成長戦略を組み、生産性ではなく対前年売上額を目標とし、利益率を下げてでも中長期の投資計画を実行してリターンを得ていくようにすれば、どちらの詰まりも薄れてゆきます。
そして、成長戦略を実現するためには、戦略に沿った行動をとった人に報いる仕組みこそが必要となります。
だからこそ、子会社の成長戦略を実現する際に、人事制度こそが重要な変革ドライバーになるのです。
ぜひ皆さんも、自社の成長戦略を支える人事制度になっているかどうか、考えてみてください。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)
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