あしたの人事の話をしよう

セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役 兼 グロービス経営大学院HRM担当准教授の平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

まじめな話と、雑感(よしなしごと)とがまじっているので、 カテゴリー別に読んでいただいた方が良いかもしれません。 検索エンジンから来られた方で、目当ての記事が見当たらない場合 左下の検索窓をご活用ください。

「弱者は可哀そう」という記事は読み飽きた

Yahooに気になる記事が二つ掲載されていましたので紹介してみます。

ユニクロ 疲弊する職場(東洋経済オンライン)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130304-00013101-toyo-bus_all

貧しくなる資本主義 アマゾンの人間オートメーション(木村正人)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kimuramasato/20130303-00023711/

痛ましい、ように書かれていますが、はてさて。

メディアが良く描く「これだけ働かされているのに、給与はこれだけ」というロジックはおかしいと思っています。

「これだけ働かされている」

「給与はこれだけ」
との関係を間違って理解している人が多い。

正解は
「これだけ働かされている」から「給与はこれだけ」
なのです。

職業選択の自由、というものもあります。
今なら、労働力市場が整備されています。
もしユニクロやアマゾンが人間酷使産業であるとするなら、市場機能が働き、ユニクロやアマゾンで働く人がいなくなります。
実際上記の記事にはユニクロの3年離職率が50%を超えていると記載されています。
それは、市場機能が正常に働いているから、という部分もあるでしょう。

スキルアップの努力が、今ほど容易な時代はないと思っています。
書店に行きさえすれば、参考になる書籍が山のようにあります。
どれを選べばわからない、というのなら、アマゾンの書評を見たり、無料メールマガジンの過去書評一覧を見ればいい。
古本を買えば、送料込でも1000円以内でスキルアップのきっかけは得られるでしょう。

あるいはもう少しお金をかけるのなら、様々なスクールもあります。
成功者や知識人とつながりを持つことも、SNSを使えば以前よりはずいぶん簡単です。
ためしにFacebookでどんな有名人でもいいから5人選んで、丁寧にメッセージを送ってみてください。
5人のうち、1人は友達申請をOKしてくれますから。

過酷な労働環境で体と心を壊してしまう、という事実はとても痛ましいものです。
そこには手を差し伸べなければいけません。

しかし一方で、スキルアップもせず、マインドセットも変えず、ただ目の前の安心にしがみつく生き方を是とすることはどうなのでしょう。
絶対弱者は救わなければいけませんが、成長する可能性を秘めた人が単に今弱者である、というのなら、それは成長を促す方がいい。
それがその人のためにもなるし、ひいては社会のためにもなります。

成長には痛みが伴います。
改善はとてもつらいことです。
でもその先に、必ず、まだ見ぬ地平が待っています。

私が書いた「うっかり一生年収300万円の会社に入ってしまった君へ」という本の中でも、そんなことを書いています。
この本に共感していただいた、多くの方の話を聞きました。
どなたもとても前向きな人でした。
前向きな人に共感していただける本、を書けたのだな、と少し嬉しくなりました。



平康慶浩(ひらやすよしひろ)