あしたの人事の話をしよう

人事コンサルタント 平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

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人事制度を理解すれば転職で損をしない(前編)  年俸制は損か得か?

転職するとき、「うちは年俸制です」と言われることがある。

大企業なら30%以上が年俸制を導入しているし、中堅企業でも20%~30%の企業で年俸制を導入している。

月給制の会社から年俸制の会社への転職だと、年収が増える、と考える人も多い。しかし年俸制だと厳しいんじゃないか?と不安に思う人もいる。

 

じゃあこの年俸制と言う仕組みはどういうものなのだろう?

実は「年俸制」について(かつては)多くの会社で誤解があった

 

ためしにグーグルで検索してみてほしい。

すると労働政策研究・研修機構の説明が最初にヒットする。2番目はウィキペディアだ。(2014年4月25日現在)

これら二つのページが誤解をうまく説明してくれている。というか、誤解を含めて説明してくれている。

 

かつて言われていた年俸制に対する誤解は二つある。

1.年俸制にすると成果主義が浸透する

2.年俸制にすると残業代は払われない(払わなくてもよい)

これらが誤解であることは当然なのだけれど、じゃあ年俸制とはどういうものだろうか。何か特徴があるのだろうか?

 

簡単に言ってしまえば、年俸制には特徴なんてない

月単位で給与を決めるのが月給制で、年単位で決めるのが年俸制、というだけのことだ。そして年俸が決まっているからといって、年度途中に金額を変えてはいけない、ということでもない。

そもそも月給だって、多くの会社では年度初めに変わることが基本だ。

 

月給×12=年収

 

という計算式を用いているか、

 

年俸÷12=月給

 

と言う計算式を用いているか、と言う違いでしかない。

 

また、年俸制だと残業代が出ない(払わなくてもよい)、というのもウソだ

残業見合いを給与に含めることは、月給制でも年俸制でも可能だ。

ただし、見合い分の時間を越えて働いているのなら、その分の残業代は支払わなくてはならない。

たしかに2~3年前までは裁量労働的な運用(固定残業代を支払うことで、実質残業代を追加で払わない運用)が黙認されているところもあったのだけれど、最近の労働基準監督署は厳しくなっている。業界内の〇〇社が労基署に入られたらしい、という情報はすぐに各社に伝わっていく。

去年や今年、僕のところにも「裁量労働制をやめようと思うんですが」という相談が何件もあった。

 

だから、今や年俸制だろうが月給制だろうが、得も損もない

経済財政諮問会議産業競争力会議の結果、時間ではなく成果で評価される仕組みが認められたところで、月給制のままその仕組みを適用することができるからだ

 

以前は僕のところにも誤解したままでコンサルティングの相談があったりした。

「残業代を固定化したいので年俸制にしたいんです」

成果主義を導入したいので年俸制を考えています」

そんな相談もたくさんあったのだけれど、その都度僕は答えなければいけなかった。

 

年俸制と、残業代や成果主義は何も関係ありませんよ」

  

 そう答えると不思議そうな顔をされたりしたので、さらに説明した。

 

「残業代を固定化したいのなら、裁量労働制の導入が必要です。でも職種が限定されているし、法律と判例とが矛盾しているので、働いた分の残業代が欲しいと言われてしまうと裁判で負けますよ」

「いわゆる成果主義とは評価と報酬との連動性を高めることなので、月給でも年俸でもどちらでも構わないんですよ」

 

大半の会社では「なるほど」と納得されたけれど、時には「そんな正論を言うコンサルはいらない。うちの会社がやりたいように仕組みを作ってくれるコンサルを探す」と言われてしまったこともある。それらの会社は、残念ながらその後大変な目にあったようだけれど。(そもそも残業代をセーブしたいのなら、社内の仕事の与え方を変えなければいけない)

 

だから年俸制だろうが月給制だろうが、その仕組みはどうでもいい。

月給制でも残業代を払わない会社は払わないし、年俸制でも残業代を払う会社は払う。

 

実際のところ、年俸制を採用している会社は減っている。そして、年俸制を採用しない、と決めている会社は増えている。

厚生労働省の就労条件調査が平成18年と平成24年に調査した結果のグラフが以下のものだ。

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このグラフは企業全体に対する割合だけれど、企業規模別に分けても傾向は同じだ。

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結局残業代を払わなければいけないのなら、あえて年俸制にする意味はない、ということも理由の一つにあるだろう。

 

じゃあ年俸制の企業に転職するとして、そのことを気にする必要はないだろうか?

いや、気にすべき点がある。

それは、年俸制という人事制度を作った背景にある思想だ

経営層の思い、と言い換えても良い。

 

年俸制を採用している企業は、多かれ少なかれ、契約、と言う概念を好む。

年俸で契約しているということは、そこに期待しているなにかがある。

それは達成してほしい成果の場合もあるし、職務品質の場合もある。

その期待に応えられなければ、翌年の年俸は下がる。

 

では期待に応えれば年俸はあがるのか、というと、簡単にYESとはいえない。

そこで確認してほしいことは、年俸制なのか月給制なのか、ということではなく、別の人事の仕組みだ。

 

それは、賞与と昇格の仕組みだ。

もし就職先や転職先の給与の仕組みを確認できるのなら、賞与と昇格の仕組みを確認した方がよい

特に転職する際には、これらの条件をちゃんと確認しておかないと、提示されていた年収額と、実際にもらえる年収額とで、100万円以上の差が出ることもある。 

 

 

後編「昇格と賞与の秘密」に続く(4月26日更新予定)

 

 

平康慶浩(ひらやすよしひろ)

 

 

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うっかり一生年収300万円の会社に入ってしまった君へ

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なにげにこんな本の一部も書いてたりする。

 

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