あしたの人事の話をしよう

人事コンサルタント 平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

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「俯瞰」できる人が上がる

昇進のルール、として2つの記事を書きました。

昇進のルール - あしたの人事の話をしよう

昇進のルール(2) - あしたの人事の話をしよう



淡々と書くために、あえてフォントもいじらなかったのですが、上記の記事の続きである今回は、少しいじってみます。

 
■スキルの見せ方が大事になる
 「私は業界シェア分析を経験したことがあります」
 という言い方と
 「私は、事業計画策定の一環としての業界シェア分析を担当しました」
 という言い方の違いはなんでしょう。
 
 実際に行った作業は「業界シェア分析」です。
 これは間違いありません。
 だから未経験の人よりも確実に、業界シェアを分析するスキル、については獲得している可能性が高いわけです。
 
 前者の言い方では、行った作業そのもの=スキルそのものをあらわしています。
 後者では、スキルに加えて、その作業の位置づけを説明しています。
 結果として後者の方が、聞く側に「できるやつ」という印象を与えやすくなります
 
 つまり、同じ作業、同じ経験、同じスキルであっても、見せ方によって印象が変わるのです。
 昇進というタイミングだけでなく、サラリーマンとして生きるすべてのタイミングにおいて、このスキルの見せ方というものがとても重要になっているのです。
 昇進ルールの変化はその一例に他なりません。
 
■見せ方とはブランディングでもある
 スキルの見せ方、とは言い換えると、「他人に選ばれやすくする」ということでもあります。
 企業勤めの状態ではその必要性をあまり感じませんが、独立したり起業したりするとこの「選ばれる」ということが何よりも重要であることがわかります
 
 少し余談になりますが、今多くの日本の製造業は次第に「プロダクト・メーカー」ではなくなりつつあります。
 では何になっているのかといえば「ブランド・メーカー」に移りつつあるわけです。
 極端に言えば、デザインだけ作って、製造はすべてOEM。そして自社ブランドを冠して卸す。
 別に高額商品に限ったわけではありません。たとえばインスタントラーメンの製造工場が、別のメーカーであっても同じ下請け工場であったりするようなものです。
 
 ではその先にどんな理想形があるのでしょう。
 私は一例として、ルイ・ヴィトングループをあげたいと思います。
 
 「創造性×マーケティング」
 
 このようなキーワードがルイ・ヴィトングループのホームページに記載されていますが、まさにメーカーの将来像を示すものではないでしょうか。
 
 さて、多くの製造業がブランド・メーカーに変わりつつある、ということはすなわち、良いものを作っていれば売れる、という時代がはるか昔の話になっていることを示してもいます。
 これは数十年前からずっと言われているのですが、やはり人は、特に日本に住んでいる人は「言わなくてもわかってくれる」ことを求めてしまいます
 古き良き昭和だけでなく、今もなおそのような「暗黙」にあこがれてしまうのです。
 
 実際のところ、あなたの周りにもいますよね?
 言わなくても、自分から行動しなくても、いつか誰かが認めてくれる、と信じている人たちが。
 それらの人が「選ばれた」ことを、あなたは見たことがありますか?
 

■どんな経験を積めば「選ばれる」のか

 過去の実績を積みさえすればエスカレータのように昇進できる企業は減りつつあります
 そして、「任せられる」人を昇進させる企業が増えていきます。
 
 「任せられる」とはもちろん過去の実績によって証明されるのですが、この過去の実績というものが変わっているわけです。
 上司に言われた仕事をきっちりとすることが実績につながるのでしょうか?
 それはもちろん実績ではあります。
 でもたとえばこんな経験をしたことはありませんか?
 
 上司:「この資料をこんな感じでつくっておいて」
 部下:「わかりました」
  (1時間後)
 部下:「できました」
 上司:「違うんだよなぁ。こんな感じじゃなくてさ、あんな感じって言ったじゃない」
 部下:「……つくりなおします」
  (1時間後)
 部下:「できました」
 上司:「だからさぁ。こんな感じでもあんな感じでもなくってさ、ばーっ!って感じだって何度言えばわかるんだよ!」
 部下:「……」
 
 普通に考えればひどい上司かもしれません。
 でも、この部下に対する上司の評価が「できない奴」になることもわかりますよね。
 ひどい上司の下についたこの部下はかわいそうなのでしょうか?
 
■作業の出口を知る
 私自身も部下に対して、上記のような指示をすることがあります。
 でも幸いにして、部下からクレームが来ることはありません。
 それは、この例で、上司が考えているけれども口に出していない部分をちゃんと説明するからです。
 この例の前半部分を、私が部下にするときの言い方に変えてみます。
 
 平康:「この資料をこんな感じでつくっておいて」
 部下:「わかりました」
  (1時間後)
 部下:「できました」
 平康:「違うんだよなぁ。
     つくってもらってやっとわかったんだけど、この見せ方だと、こちらが言いたいことが伝わらないよね。君は資料作りながら何も思わなかったの? 
     こんな感じじゃなくてさ、あんな感じって言ったじゃない
 部下:「え……言われたとおりにしたんですけど」
 平康:「それじゃ君の頭いらないよね。もう少し考えて、僕がどんな資料を求めて指示してるのか考えて作り直してみて
 部下:「はい……つくりなおします」
 平康:「ちゃんと1時間以内にね。だらだら仕事しちゃダメだよ
 
 私がひどい上司であることには変わりないかもしれませんが、要は上司はこんなことを考えているということです。
 上司から指示された仕事の意味を知る、ということは、任された仕事の出口をちゃんと知る、ということなのです。
 その資料はだれに見せるものなのか。その結果目指すのは、受注なのか、稟議承認なのか。
 それらをしっかりと考えることで、身につくスキルのレベルが高くなります。
 このことは、次の「俯瞰する」という段階で、選ばれるためのスキルに変わります。
 
■作業を俯瞰する
 一つ一つの仕事の出口を知ることで、人はやがて仕事を俯瞰してみることができるようになります。
 自分が担当している仕事はちっぽけなものであっても、どんな成果を目指している作業なのかを理解すれば、効率もあがります。
 なによりもやる気が維持されるようになります。
 
 俯瞰して仕事を見られるようになったとき、口から出てくる言葉が変わります。
 
 最初の例として「業界シェア分析」の話をしました。
 出口を知り、俯瞰してみるようになれば、自然とおのずから、 
 
 「私は業界シェア分析を経験したことがあります」
 という言い方ではなく
 「私は、事業計画策定の一環としての業界シェア分析を担当しました」
 という言い方に変わることがわかるでしょう。
 
 この俯瞰、という視点が実は上司の視点です。
 そして俯瞰できる人材は、「任せられる」人として、昇進の候補になってゆきます
 作業そのものは部下の仕事しか経験していなくても、上司の視点を持って話しをし、行動することで、「選ばれる」ようになるのです
 
 さて、振り返ってみて、仕事をしながら出口を考えたこともないし、俯瞰もしてこなかった。
 そんな人は「選ばれる」ことはないのでしょうか。
 そんなことはありません。
 せっかくのこの機会ですから、自分自身の「スキルの棚卸し」をしてみましょう。
 
 スキルの棚卸し方法についてはまた次回。

平康慶浩
(ひらやすよしひろ)