あしたの人事の話をしよう

人事コンサルタント 平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

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日本で若者が起業しない理由を人事の観点から答えてみる

今日の日経朝刊に、「増えぬ、若者の起業」って記事が。
夜になってやっと読んだんですが。

「失敗の代償大きく」とかが企業が増えない原因として、大きく書かれていますね。

ちょっとトンチンカンだなぁ。と思います。

若者が起業しない理由ってひとつだけだと思うんですけどね。

「起業のネタ作りを含めて、新卒で入った企業で、起業のための経験を積めない」

これに尽きると思います。

新卒一括大量入社はしばらく変わらないでしょうし(変わるとしたら一流企業が大学を中退させてでも学生を雇い始めるときでしょう)、若者が社会に出る入口はとりあえずどこかの会社なわけです。

でも残念ながら、新卒に大事な仕事をさせる企業は、外資系のごく一部や、先進ベンチャー企業以外にはほとんどありません。
それ以外の企業では若者には「下積み」をさせます。
「下積み」という言葉はどの業界でも好まれますが、若者に下積みさせている限り、起業するわけありません。
起業家を育てたいのなら、下積みは半年から1年程度にして、すぐに意思決定権を持つ立場に据える。そして現場で意思決定させて、周りがその意思決定が間違わないようにフォローしつつも、彼の判断に従う。
そんな人事の仕組みがないと、絶対に若年起業家なんで増えません。

旧い企業で若者を活躍させる人事の仕組みができない理由は簡単で、「ポストがないから」です。
例えば明らかに営業センスのある若者が入ってきた。彼はMBAも持っていて、ベテラン営業課長よりもどんどん斬新で的確な意見を言う。
でも、人事の仕組みが彼に与えるのは、周りよりも少し多いAランクの昇給だけです。
Bランクに比べて、3,000円から5,000円くらい昇給幅が多いかな。
その程度です。
外資系企業でも、日本法人だとそんなに変わりません。別に世界標準の年俸を与えなくても、優秀な人材が雇えてしまいますからね。

ちなみに欧米本社で優秀な新卒を雇うと、初年俸6万ドルとか8万ドルとかもわりとあたりまえですが。

日本企業では、優秀な若者にあえて苦難の道を歩ませよう、と考える幹部も多い。
その間に若者は、キャリアアップのために転職してしまうんですけどね。

じゃあ若者にポストを与えるにはどうすればいいか。
ベテランからそのポストを奪わないといけません。
一方で、じゃあ45歳のいまいちうだつのあがらない課長からポストをひっぺがして、若者に与えればよいか、というとこれは難しい。
45歳のベテランの処遇をどうすればよいかわからないからです。
「君は24歳の若者以下の能力しかないから、降格させた」と言うわけにもいきませんしね。
(私なら言いますけど)

最近は社会保険や年金制度の破たんから政府は、企業側に雇用責任という名目ですべてを押し付けてきていますが、その結果、使えない中年や高齢者を雇い続けることを企業に強いています。
それって結局若者の活躍の場をなくし、起業スキルも低下させているんですがわかってんのかな、と頭を抱えます。

多くの旧い企業側も問題があって、育てた若者に出ていかれることを、徹底的に嫌います。
例えば人材輩出企業と言われているリクルートやアクセンチュアが、多くの人材を輩出する一方で、若年層の離職率が高い(というか平均勤続年数って5年くらいじゃないですかね)と言っても、「うちはそんな『ひどい会社』にはなりたくない」と言われたりします。
「卒業生」が活躍している会社って、新卒にも魅力があって、優秀な人材がどんどん集まりますよ、と説明してもなかなか思い切れない。

いずれにせよ、多くの会社で若者は「育てるべき対象」として扱われます。

本来なら「活躍してもらう対象」だと思います。

でも活躍させたくない企業も多い。理由は想像してみてください。

あ、あと、優秀な若者を指導できない中年も多いですよ。
自分が育てられていないから、育て方がわからないんですよね。
見ていてかわいそうです。


まとめてしまえば、結局旧い体質の会社が多いから、若年起業家が生まれないんです。
企業内部での新陳代謝が当たり前になったら、どんどん起業家は生まれるようになります。


なのに、政府が融資基準を下げるなんてトンチンカンなことをしたら、非合法団体による詐欺まがいの行為が増えるだけだと思いますけどどうでしょう。


平康慶浩(ひらやすよしひろ)