あしたの人事の話をしよう

人事コンサルタント 平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

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再雇用者の不満も二種類あるなぁとあらためて気づきました

以前から感じていたのですが、60才で再雇用された方々の不満には2種類あります。

 

第一の不満は、仕事が同じなのに給与を下げられて納得がいかない、というものです。

このことに対して、同一労働同一賃金を強制する仕組みが適用されます。

 

パートタイム・有期雇用労働法

 

といい、大企業は2020年の4月から、中小企業は2021年の4月から適用されます。

罰則規定がないので多くの企業は様子見状態ですが、政府の本気度はかなりのものです。だから違反している企業名の公表、くらいはすぐに実施しそうです。

ESG経営が広がる中、罰則規定がないとしても、上場企業は本気で対応しないとまずい、と判断している場合が多いのです。

 

 

興味深いのは第二の不満です。

第二の不満は、仕事内容が変わったけれど、とにかく給与が下がったことに納得がいかない、というものです。

第一の不満と違い、ちゃんと理屈は通ってはいるのです。

けれども、理屈抜きにして、下げられて腹が立つ、というものです。

 

で、実は第二の不満のその先がありまして、それは下げられたあとの額が少なすぎて生活が厳しい、というものと、下げ幅が大きすぎてショックだ、というものがあります。

 

Aさんは下げられた後の手取りが15万円くらいになってしまい、とてもこれでは生活ができない、と嘆きます。

Bさんは60%も給与を下げられて、とてもショックだ、といいます。

 

世の中の多くは,Aさんタイプです。

定年時の月収が35万円くらい。年収は500万円くらいでしょうか。

標準的な下げ幅は40%くらいですから、額面で21万円くらいになり、手取りが10万円台になります。年収換算では300万円未満となります。

年金をただちに受け取れるわけではありませんので、これでは確かに生活が厳しくなります。

 

では60%も給与を下げられたBさんはもっと大変なのでしょうか。

いえ、そうではありません。

60%下げるタイプの企業は、基本的に大手企業です。

これらの企業では、退職時年収が1000万円を優に超えていることが多いのです。

たとえばある企業では、平均的に55才までの年収が1500万円。そこから役職定年で2割カットし、平均1200万円の年収になります。

そして再雇用時にはそこからさらに60%カットする仕組みです。

そのような境遇にあるBさんは、ひどい仕打ちだ、と常に不満を口にします。

けれどもBさんの月収は額面で40万円はあるのです。手取りだと30万円台前半でしょうか。

 

Bさんタイプの対応をする会社では、もちろん同一労働同一賃金の法制化を先取りしていて、仕事はシンプルなものに変えています。

会議に出るにしてもオブザーバー程度。意見を求めはしますが責任は求めません。

それは1200万円から60%カットされた480万円の年収の仕事としては、決して不満を言うべきレベルのものではありません。

けれども、Bさんたちは不満を常に口にします。

 

興味深いことに、声が大きいのは実はBさんタイプです。

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それは、Bさんタイプの大半が大企業社員だから。

生活水準も高いので、それを一気に引き下げることが難しく、不満の度合いも高いのです。けれどもそうして受け取っている金額は、世の中の大半を占める中小企業社員の対年前の年収だったりするわけです。

このタイプの人たちを70才まで雇い続けるとしたら、いったいどれくらいの報酬額を、どういう理屈でお支払いすべきでしょう。

企業経営者の悩みはつきません。

 

これからの10年間で日本企業の人事制度は構造転換を余儀なくされます。

それはとても大きな変革です。

年長者が偉い、とか、経験を積むことが美徳、とか、嫁さんと子どもを食わせて一人前、とかの常識が変わるでしょう。

 

そんな中で、変革にさらされる一人一人がそのことを前向きにとらえられるような、そんな進め方ができないものか、とあらためて考えを深めています。

 

 

平康慶浩(ひらやすよしひろ)

 

※先日出演したNHKラジオ「70歳定年制 働く選択肢とどう向き合うか」の聞き逃しコーナーはこちらから。2020年3月23日(月) 午後8:00配信終了。

www4.nhk.or.jp