継続雇用の仕組みは60歳よりも前の世代に向けて作る
SMBCコンサルティングの時事セミナーで話してきました。
改正高齢者雇用安定法にどう対応すべきか、という話です。
【時事】60歳以降の再雇用時代の人事制度のあり方
http://www.smbc-consulting.co.jp/company/seminar/kansai/month/201401/seminar_20132704-01.html
3時間のショートセミナーでしたが、参加者のアンケート結果は上々。
ってか独立してから開催するセミナーの方が明らかにアンケート点数が高くなっているのはなぜだろう。サラリーマンコンサルタント時代には、自分に甘えがあったのかもしれません。
で、細かいことはあまり書くわけにいかないのですが、話したことの中でいくつかのポイントを紹介してみます。
まずこんなグラフのもとにお話。
1.給与を下げるタイプの継続雇用制度は間に合わせに過ぎない
厚生労働省統計にもとづくと、100社のうち81社までが継続雇用で改正高齢者雇用安定法に対応しています。
独自に実施したアンケート結果をふまえて、この仕組みではダメですよ、ということをお話しました。
もちろん、継続雇用制度にメリットはあります。それは導入がとても簡単だということと、再雇用者の給与を簡単に下げられる、ということです。
しかしデメリットがとても大きい。
メリットにある、「再雇用者の給与を下げられる」ということがそのままデメリットになっています。
再雇用者自体のモチベーションが下がる、ということがひとつ。
それよりも大きなデメリットは、モチベーションが下がった人たちと同じ場所で働かざるを得ない現役世代の雰囲気が悪くなる、モチベーションが下がる、ということです。
これと同じ状態は、平成10年度の60歳定年が義務付けられた際にも起きたはずなんですが、また繰り返す企業が多い。そのことに対する警鐘です。
2.かといって定年延長はリスクが高い
じゃあ定年延長だとどうか、といえば、上記のデメリットは解消されます。
定年延長を導入している企業は100社中16社。ちなみに大企業だけだと100社中7社で、中小企業の場合で100社中17社です。中小企業の方が定年延長を採用しているんですね。
しかし単純に定年延長を導入すると、会社側の人件費リスクが高まります。
固定費負担が増えてしまうので、その分だけ売り上げをあげないと利益が下がってしまう。60歳以上の人たちだけでビジネスをはじめてみたトヨタの事例などでも、決して順調なわけではありません。そこで雇える人員数も限られているし。
新卒を採用する枠だって減らさざるを得ないかもしれません。
じゃあどうすべきか。
3.従業員を儲けにつなげる
セミナーでは他にもいろいろと話したのですが、それらをすっ飛ばした結論としては、継続雇用の問題点というのは、現状の人財マネジメントそのものにあるということです。継続雇用で浮かび上がってくる問題点というのは、そもそも、現役世代に次のような問題点があるからです。
① 給与を払いすぎている従業員がいる
② 時代に合わない従業員がいる
③ 名ばかり管理職がいる
これらの問題をそもそも解消することで、継続雇用は、会社と従業員双方にとって幸せな結果をもたらすことができます。
そのためには3つの改革が必要です。
第一に、生産性を改革する。
わかりやすく言い換えると「一人一人が利益を出せるようにする」ということ。
第二に、職務改革をする。
「一人一人に儲けが出る職務を与える」ということ。
第三に、人員動態管理をする。
「60歳になる前に、適材適所を実現する」ということです。
そのためには、賃金カーブという常識を捨ててなければいけない、とか、従業員に対して、知識+経験+変化対応力を持てるように育成しなければいけない、とかそんな話をしました。
あと、解決策としてハイブリッド型人事評価制度も紹介したのですが、その内容は、もうすぐ出版されるこの本に詳しく書いてあります。
7日で作る 新・人事考課 CD-ROM付
また、月刊人事マネジメントという人事専門誌でも、3月号からこんな連載を始めます。
「人件費の近未来」
~揺れる時代の再分配のあり方を探る~
よろしければご覧ください。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)