【人件費の近未来1-4】 高まった生産性の分だけベースアップする
(当記事は、月刊人事マネジメント2014年3月号から1年にわたって連載した記事を、2015年の現状にあわせて加筆修正したものです。)
前回記事はこちら。
2015年度対応は上記のように考えることで、企業がコスト負担をしながら、採用力を維持するとりくみとして整理できる。
それは社会と個人の要請にも沿うので、公共性も維持できる。
ではベースアップは継続すべきなのか。
もし消費増税が計画通り実施されて10%に引き上げられるとすれば0.7%~1.6%程度のベアが再度必要になる。20万円の月給なら1400円~3200円だ。消費の冷え込みや消費者物価への反映状況によっては、さらに高い引上げが求められるかもしれない。
しかし本来のベアの考え方のひとつは、インフレ率にあわせた所得調整だ(もう一つの考え方は後述する)。となれば、日本のインフレ率がどのように推移してゆくのかを見なければいけない。
特に政府と日銀が示す2%のインフレターゲットが仮に実現したとすれば、それにあわせたベアは必要なのだろうか。
インフレ率が2%だからといって、毎年毎年2%ずつベースアップし続けることは、現状の企業にとってまったく現実的ではないことに気付くだろう。
そこでもう一つのベアの考え方を示す。それは生産性の向上を賃金に反映するというものだ。
生産性を賃金に反映するということをわかりやすく言い換えれば、売上に対する人件費率が下がった分だけ、人件費を上積みする、というものだ。
もちろん生産性を高める要因は、従業員の習熟や成長だけではない。機械設備の刷新やITシステムの増強などの要因も考えられる。
重要なことは、従業員の習熟や成長により生産性が伸びた分は、従業員の報酬に反映するという考え方だ。これが第二のベアの考え方だ。
この考え方に沿う限り、ベアは企業の視点の中で完結できる問題にもなるのだ。
この20年間、日本全体での生産性は微増しつつもほぼ横ばいで推移してきている。そこにデフレ要因も重なり、ベアは一度死語となった。
消費税増税により現在ベアがクローズアップされているが、各社の生産性が向上しない限り、増税対応が終われば再び死語となるだろう。
それは実は企業の潜在力が高まっていないことの証でもある。
そうならないよう、今回のベア実施にあわせて、一人一人の生産性を高める働き方を模索する必要がある。
(第2回連載へ 2015年1月更新予定)
平康慶浩(ひらやすよしひろ)
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